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2026年9月4日
活用したい
【「売れない不動産」をどうするか】~相続土地国庫帰属制度と、私たちが実際の相談で考えていること~

~国に引き取ってもらう前に、隣地との一体利用から考えてみる~
1.私たちでも、取り扱いに頭を悩ませる不動産があります
不動産会社に相談すれば、どんな不動産でも売却できる。
価格を下げれば、そのうち買い手が見つかる。
そのように思われる方も多いかもしれません。
しかし、実際の不動産取引では、そう簡単にはいかない不動産があります。
私たちのところにも、日々さまざまな不動産売却や活用のご相談が寄せられます。
土地、建物、空き家、農地、山林、古い貸家、長期間利用されていない不動産など、その内容はさまざまです。
その中には、私たち自身も、
「この不動産をどうしたらよいだろう」
と取り扱いに頭を悩ませるものがあります。
例えば、
・市街化調整区域にあり、土地利用に大きな制約がある
・道路から敷地へ入る部分が狭く、車両の進入が難しい
・接している道路そのものが狭く、大型車両や重機を入れることが難しい
・現況が山林で、利用する前に大量の樹木を伐採しなければならない
・農地であるため、売買や利用について農地法上の手続きが必要になる
・土地の形状や面積の問題から、単体では利用方法を考えにくい
・共有名義となっており、処分するためには複数の所有者との調整が必要になる
・古い建物が残っており、解体や修繕に相当な費用がかかる
・長期間使用されておらず、境界や建物、設備などについて改めて確認しなければならない
・土地と建物の権利関係が複雑になっている
このように、一つだけではなく、いくつもの条件が重なっている不動産です。
実際に現地を確認すると、地図や公図、登記情報だけを見ていたときよりも、さらに難しさが分かることもあります。
例えば山林であれば、単に「木を切れば使える」という話ではありません。
樹木がかなり繁茂していれば、伐採するだけでも相当な費用がかかります。
さらに伐根、整地、造成などが必要になることもあります。
道路が狭ければ、大型の重機やトラックを入れることも難しくなり、一般的な場所と比較して工事費が割高になる可能性もあります。
建物についても同じです。
「古い建物だから安く売ればよい」
「使っていない空き家だから、土地の値段だけで売ればよい」
とは限りません。
残置物の処分が必要かもしれません。
雨漏りや腐食が進んでいるかもしれません。
増築部分が登記されていなかったり、境界付近に建物や工作物があったりすることもあります。
解体するのであれば、解体費用だけでなく、接道条件や周囲の建物との距離によって工事方法や費用が変わることもあります。
一見すると「土地を売るだけ」「古い建物を処分するだけ」に見えても、調べていくと複数の問題が重なっていることは珍しくありません。
市街化調整区域であれば、更地にしたからといって自由に建物を建てられるわけではありません。
農地であれば、買主が誰なのか、何に利用するのかによって、必要となる手続きも変わります。
つまり、こうした不動産を購入する方は、売買価格だけを見て判断するわけではありません。
購入した後に、
「この不動産を何に使えるのか」
「利用できる状態にするまで、どのくらい費用がかかるのか」
「法令上、希望する利用ができるのか」
「建物を残すのか、直すのか、壊すのか」
「取得した後も維持管理にどのくらいの費用がかかるのか」
「そこまで費用と手間をかけて取得する意味があるのか」
というところまで考えます。
ここが、一般的な住宅地や中古住宅の売却とは大きく違うところです。
こうしたご相談でよくあるのが、
「50万円でも構わない」
「100万円くらいで売れればよい」
「赤字にならなければよい」
「多少費用がかかってもよいので、とにかく手放したい」
というお話です。
所有者のお気持ちはよく分かります。
特に相続によって取得した不動産で、ご本人が使う予定もなく、草刈り、建物管理、固定資産税などの負担だけが続いている場合、
「高く売りたいわけではない」
「子どもには残したくない」
「自分の代で整理しておきたい」
ということが、ご相談の本当の目的であることも少なくありません。
ただし、ここで一つ理解しておかなければならないことがあります。
不動産は、価格を下げれば必ず売れるものではありません。
例えば200万円で売れない不動産を100万円にする。
100万円でも売れなければ50万円にする。
それでも難しければ10万円にする。
極端な話、1円にする。
それでも、その不動産を必要とする人がいなければ売買は成立しません。
価格が安いことと、その不動産を必要とする人がいることは別の話だからです。
土地を1円で取得できたとしても、伐採や造成に数百万円かかるかもしれません。
建物を無償で取得できたとしても、修繕や解体、残置物処分にそれ以上の費用がかかるかもしれません。
さらに測量費、登記費用、維持管理費などが必要になることもあります。
そして、その費用をかけたところで、希望する利用ができるとは限りません。
そう考えれば、「価格が安いから買う」という判断にはならないのです。
私たちが実際に相談を受ける際には、売主側の希望価格だけではなく、買主側から見たときに、
「この不動産を取得する合理性があるのか」
というところまで考えます。
売主側に、
「1年以内に処分したい」
「価格はいくらでもよい」
という事情があったとしても、それだけで市場に需要が生まれるわけではありません。
所有者側の「早く手放したい」という希望と、その不動産を「取得したい」という第三者の需要は、分けて考える必要があります。
需要がないところに、不動産会社が需要そのものを作り出すことはできません。
私たちにできるのは、その不動産がどのようなものなのかを調べ、問題点を整理し、どのような人であれば利用できる可能性があるのかを考え、その可能性を一つずつ探していくことです。
場合によっては、一般の不動産市場へ広く募集すること自体が適していない不動産もあります。
不動産ポータルサイトへ掲載すれば解決する。
看板を立てれば問い合わせが来る。
価格を大幅に下げれば誰かが買う。
そういった単純な話ではありません。
一方で、
「山林だから無理」
「農地だから無理」
「道路条件が悪いから何もできない」
と、見た目の条件だけで最初から結論を出すことも適切ではありません。
実際、相続土地国庫帰属制度でも、農地や森林だからという理由だけで申請できないわけではありません。
いわゆる袋地についても、それだけで直ちに制度の対象外になるわけではなく、その土地が抱えている具体的な問題によって判断されます。
反対に、一見それほど問題がないように見える土地でも、建物、境界、権利関係、管理上の問題などによって国庫帰属が難しくなる場合もあります。
つまり、
「売れそうか」
「国が引き取ってくれそうか」
を、第一印象だけで決めるべきではないということです。
だからこそ私たちは、活用や処分が難しい不動産について、最初から「いくらなら売れるか」という価格の話だけをするのではなく、
「なぜ難しいのか」
というところから考えるようにしています。
問題が道路なのか。
法令上の制限なのか。
土地の形状なのか。
建物の状態なのか。
権利関係なのか。
周辺環境なのか。
それとも、いくつもの問題が重なっているのか。
その原因を整理しなければ、次に何をすればよいのかも見えてきません。
そしてもう一つ、今回の記事でお伝えしたいことがあります。
活用や処分が難しいからといって、最初から出口を一つに決める必要はありません。
一般市場で売却する。
隣接地の所有者に相談する。
近隣の方へ声を掛ける。
贈与も含めて引き受けてもらえる相手を探す。
農地であれば農地としての活用方法を調べる。
森林であれば森林としての管理や活用方法を調べる。
行政への寄附などについて可能性を確認する。
そして、相続によって取得した土地であれば、相続土地国庫帰属制度についても調べてみる。
どれか一つだけを選んで、結果が出るまでほかの方法を止める必要はありません。
むしろ私たちは、活用が難しい不動産ほど、考えられる方法を複数並べ、可能なものは同時に動かしてみることが大切だと考えています。
相続土地国庫帰属制度そのものも、民間での売買や贈与など、ほかの活用・処分方法と切り離された制度ではありません。
実際に国庫帰属の申請をした後であっても、売却相手が見つかれば、申請を取り下げた上で売却することができます。
国に引き取ってもらう可能性を調べながら、隣地所有者とも話をしてみる。
一般市場での可能性も探してみる。
行政や専門家にも相談してみる。
その中のどれかが動けば、そこで改めて一番良い方法を選べばよい。
活用が難しい不動産ほど、最初に必要なのは値下げでも、処分方法を一つに決めることでもありません。
まず現在の状況を正確に把握し、考えられる出口をできるだけ多く並べてみることだと思います。
私たちでも頭を悩ませる不動産だからこそ、一つの方法だけで答えを出そうとしない。
今回の記事では、実際に私たちへ寄せられた相談をもとに、このような活用や処分が難しい不動産について、私たちがどのように調べ、どのような可能性を考えているのかをご紹介していきたいと思います。
2.まずは資料を見る。現地を見る。なぜ難しいのかを整理する
活用や処分が難しい不動産についてご相談をいただいたとき、私たちが最初に考えるのは、
「いくらなら売れるか」
ということではありません。
まず、
「この不動産は、なぜ活用や売却が難しいのか」
を整理するところから始めます。
そのためには、所有者からお話を聞くだけではなく、できる限り資料を確認し、必要に応じて行政上の規制や権利関係を調べ、そして実際に現地を見ることが大切です。
例えば土地であれば、
・登記事項証明書
・公図
・地積測量図
・固定資産税の課税明細書や評価証明書
・農地の場合には農地種別や農地転用に関する資料
・過去に取得した測量資料や境界に関する書類
・道路や土地利用に関する行政資料
などを確認します。
建物がある場合には、これに加えて、
建物の登記内容。
築年数。
増築の有無。
現在の利用状況。
修繕履歴。
雨漏りや腐食などの状態。
残置物の有無。
解体する場合にどの程度の工事が必要になりそうか。
といったことも確認していきます。
ただし、書類だけですべてが分かるわけではありません。
私たちは可能な限り、現地を見ることを大切にしています。
地図上では道路に接しているように見えても、実際に行ってみると非常に狭いことがあります。
乗用車であれば入れても、大型車両や工事用の重機までは入れないかもしれません。
山林であれば、航空写真では分からないほど樹木や竹が繁茂していることもあります。
隣地との高低差が大きいこともあります。
土地の入口だけを見ていると使いにくそうでも、隣接地との関係まで見てみると、一体利用することで可能性が出てくることもあります。
反対に、資料上ではそれほど問題がないように見えても、現地を確認したことで新しい問題が見つかることもあります。
だからこそ、
資料を見る。
現地を見る。
周囲を見る。
法令を確認する。
これらを組み合わせて考える必要があります。
実際のご相談でも、最初は、
「100万円くらいで売りたい」
というお話だったものが、現地を確認してみると、市街化調整区域であることに加え、道路条件や伐採費用などを考えれば、そもそも価格以前に利用方法を考えなければならない不動産だったことがあります。
また、
「農地だから売れない」
と思われていたものでも、農地種別やこれまでの許可内容を調べなければ、本当にどこまで利用できるのかは分かりません。
大切なのは、最初から結論を決めてしまわないことです。
そしてもう一つ、私たちが大切だと考えていることがあります。
それは、
「調べるために、最初から多額の費用をかけない」
ということです。
例えば相続土地国庫帰属制度を検討すると聞くと、
「まず測量しなければならないのではないか」
「境界確定をしなければ相談できないのではないか」
「建物や工作物を全部撤去してからでなければ法務局へ相談できないのではないか」
と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、最初からそこまで進める必要があるとは限りません。
法務省のQ&Aでも、国庫帰属制度の相談にあたっては、登記事項証明書、登記所備付地図の写し、所有権や境界に関する資料、土地の形状や全体が分かる写真など、現在用意できる資料を持参することが勧められています。
つまり、まず手元にある資料と現地の状況を整理し、その段階で法務局へ相談してみることができます。
また、国庫帰属の申請にあたって、測量を実施して境界確定図を作成すること自体は必須とされていません。
すでに境界確定図などが存在すれば提出した方が審査が円滑になる可能性はありますが、「国庫帰属を考えるなら、まず必ず測量」という制度ではありません。
一方で、申請する土地の範囲については、現地で確認できる状態であることが重要です。
承認申請では、土地の位置や範囲を明らかにする図面、隣接地との境界を明らかにする写真、土地の形状が分かる写真などが必要となります。
また、隣地所有者との間で境界について争いがある場合には問題となります。
ですから、
「測量は必ず必要」
でも、
「境界は分からなくても構わない」
でもありません。
まず現在どこまで分かっているのかを整理することが重要です。
これは国庫帰属制度だけの話ではありません。
通常の売却についても同じです。
いきなり数十万円、場合によってはそれ以上の費用をかけて測量、伐採、造成、解体などを行い、その後になって、
「そもそも買う人がいなかった」
「法令上、想定していた利用ができなかった」
「国庫帰属制度の要件にも合わなかった」
ということになれば、本末転倒です。
だからこそ、私たちは最初の段階では、
今ある資料でどこまで分かるのか。
公開情報で何が確認できるのか。
行政へ問い合わせれば何が分かるのか。
現地を見ることで何が分かるのか。
隣地や周辺の状況から何か可能性が見えてこないか。
というところから始めます。
その結果、
「測量した方がよい」
「隣地所有者へ確認した方がよい」
「農業委員会へ相談した方がよい」
「法務局へ国庫帰属制度について事前相談した方がよい」
「解体費用の見積りを取った方がよい」
といった次の作業が見えてきます。
必要な費用は、その段階からかければよいと考えています。
相続土地国庫帰属制度についても、法務局への相談は窓口だけではなく、電話やウェブでも行われており、具体的な相談については相談票やチェックシートを用意した上で事前予約して相談する仕組みになっています。
ただし、ここでも注意が必要です。
事前相談で、
「この土地であれば制度を利用できる可能性がありそうです」
という見解を得たとしても、それだけで承認が約束されるわけではありません。
正式な申請後には、書面だけではなく実地調査なども行われ、その結果によって相談段階とは異なる判断になる可能性があることも、法務省のQ&Aで明記されています。
ですから私たちは、
「相談で大丈夫と言われたから、すぐに多額のお金をかける」
という進め方ではなく、
一つずつ情報を集めながら、費用をかけるタイミングも考えていくことが大切だと思っています。
難しい不動産ほど、最初から大きく動かない。
まず調べる。
現地を見る。
問題点を整理する。
そして、その不動産に考えられる出口をいくつか並べてみる。
そのうえで、必要なところから少しずつ具体的に動いていく。
不動産の活用や処分を考えるとき、測量や工事を始めることが「スタート」なのではありません。
本当のスタートは、
「今、この不動産がどのような状態にあるのか」
をできるだけ正確に知ることだと、私たちは考えています。
3.一般には難しい不動産でも、隣接地の所有者には価値があるかもしれない
不動産の状況を調べ、現地を確認した結果、
「一般の市場で買主を探すのは、かなり難しい」
という判断になることがあります。
そのようなとき、私たちが次に考えることの一つが、
「この不動産を一番必要とする可能性があるのは誰だろう」
ということです。
不動産は、すべての人に同じ価値があるわけではありません。
一般の第三者から見れば使いにくく、ほとんど購入する理由が見つからない不動産でも、隣接地の所有者から見れば、まったく違った価値を持つことがあります。
実際に私たちへご相談いただいた不動産にも、そのようなものがありました。
市街化調整区域にあり、土地利用に制約がある。
敷地へ入る路地状の部分が狭く、車両の進入や利用方法にも制約がある。
このような条件では、一般の第三者がわざわざ購入する理由を見つけることは簡単ではありません。
価格を下げても、それだけで問題が解決するわけではありません。
そこで所有者の方へお伝えしたのが、
「現状を踏まえると、一番現実的なのは、隣接地の所有者に取得していただく方法ではないでしょうか」
ということでした。
一般の第三者にとっては利用方法が限られる不動産でも、隣接地の所有者であれば、ご自身が所有している不動産と一体として利用できる可能性があります。
例えば、隣の土地を取得することによって、
・所有する土地全体の面積が広がる
・間口を広げられる
・不整形だった土地の形を改善できる
・駐車スペースを増やせる
・庭や家庭菜園などに利用できる
・資材置場などのスペースとして利用できる
・建物と隣地との間に余裕を持たせることができる
・将来の建て替えや土地利用の選択肢が増える
・将来売却するときに、よりまとまった不動産として検討できる可能性がある
といったことが考えられます。
もちろん、隣接地を取得すれば必ず価値が上がるということではありません。
法令上の制限がなくなるわけでもありません。
しかし、
「その不動産だけを単体で見る」
場合と、
「隣接する不動産と一体として見る」
場合では、利用方法や評価が変わることがあります。
私たちはこれを、
「単体で考えるのではなく、一体として考えてみる」
という視点で見るようにしています。
例えば、間口の狭い土地があるとします。
一般の購入者から見れば、
「入口が狭くて使いにくい土地」
です。
しかし、その隣に土地を所有している方から見れば、
「自分の土地を広げるための土地」
になるかもしれません。
面積が小さすぎて単独では利用しにくい土地でも、隣接地と合わせれば一定の面積を確保できることがあります。
形の悪い土地でも、隣接地と一緒に考えることで、全体として使いやすい形になることがあります。
反対に、今回ご相談いただいた不動産そのものを隣地へ加えるのではなく、
「こちらの不動産と隣地を合わせて、一つの活用方法を考えられないか」
という発想もあります。
つまり、
「隣の方に買ってもらう」
ことだけが隣接地への相談ではありません。
「お互いの不動産を一緒に考えたら、何か違う使い方ができないでしょうか」
という相談もできます。
ここは、難しい不動産を考えるうえで非常に重要なところだと思います。
不動産会社が通常行う売却活動では、その不動産を一つの商品として市場へ出します。
しかし、単体の商品として魅力が乏しいのであれば、その枠組み自体を変えてみる必要があります。
周辺の不動産と組み合わせたらどうなるのか。
隣接地の所有者にとって何かメリットはないのか。
一体利用することで、これまでとは違う使い方ができないのか。
そう考えていくと、一般市場とは違った需要が見つかることがあります。
そして、隣接地の所有者へ相談するときには、もう一つ大切なことがあります。
最初から、
「100万円で買ってください」
「この価格で売りたいです」
という価格交渉だけにしないことです。
実際のご相談でも、私たちは、
「お母様が所有している土地を将来的に整理したい。条件については柔軟に相談したい」
というような伝え方をしてみてはどうかと助言しました。
所有者の本当の希望が、
「できるだけ高く売りたい」
ということであれば、当然、価格は重要です。
しかし、
「自分では使わない」
「管理を続けたくない」
「多少費用がかかっても手放したい」
「子どもの世代へ残したくない」
ということが本当の目的であれば、話の入口も変わります。
100万円で売却することだけを目標にするのではなく、
50万円ならどうか。
10万円ならどうか。
無償に近い条件ならどうか。
売主側で登記費用などの一部を負担したらどうか。
そうした条件まで含めて、相手が取得しやすい方法を考えることも選択肢になります。
もちろん、最初から無償で渡す必要はありません。
大切なのは、
「いくらで売れるか」
だけではなく、
「どのような条件なら、この不動産を引き受けてもらえる可能性があるか」
という視点を持つことです。
ここでも、価格と需要を分けて考える必要があります。
そして、
「以前、隣の方には一度声を掛けましたが、断られました」
というお話もよくあります。
しかし、私たちは、一度断られたからといって、それだけで可能性を完全に消してしまう必要はないと考えています。
数年前に相談したのであれば、その当時と現在では相手の状況が変わっているかもしれません。
所有者が変わっているかもしれません。
相続が発生しているかもしれません。
家族構成が変わっているかもしれません。
車が増えて駐車場が必要になっているかもしれません。
建物の建て替えを考えているかもしれません。
事業で新しいスペースが必要になっているかもしれません。
あるいは以前は、
「○○万円で買いませんか」
という話だったため断ったものの、
「価格や条件については柔軟に相談したい」
ということであれば、もう一度話を聞いてもらえる可能性もあります。
不動産そのものは変わっていなくても、人の事情は変わります。
だからこそ、以前に一度断られているというだけで、隣接地への相談を完全に終わらせてしまう必要はありません。
特に、一般市場での売却が難しい不動産ほど、隣接地の所有者は非常に重要な存在です。
一般市場では、
「この不動産を買って、何に使うのか」
というところから買主を探さなければなりません。
一方、隣接地所有者には、すでにその場所との関係があります。
自分の土地の隣だからこそ生まれる価値があります。
これは、一般の第三者とはまったく異なる条件です。
ただし、私たちは、
「隣地の方にお願いするしかない」
と決めつけるつもりもありません。
ここが今回の記事でお伝えしたい大切なところです。
隣接地の所有者へ相談する。
それと同時に、一般市場で可能性がないかも考える。
農地であれば農地としての活用方法を調べる。
行政上の制度や寄附などについて確認する。
そして、相続によって取得した土地であれば、相続土地国庫帰属制度についても調べてみる。
これらを同時に進めてもよいのです。
「まず隣地へ相談して、それがダメだったら国庫帰属を考える」
という順番にする必要はありません。
一つの方法が失敗するまで、次の方法を待つ必要はありません。
隣接地所有者へ手紙を出している間に、法務局へ相続土地国庫帰属制度について相談してもよい。
法務局への相談を進めながら、近隣で取得してくれる方を探してもよい。
一般市場へ情報を出せる不動産であれば、その反応を確認しながら別の方法も調べてよい。
複数の出口を同時に動かし、その中で具体的に進みそうな方法が出てきたときに、改めて比較すればよいと私たちは考えています。
相続土地国庫帰属制度についても、申請した後に売却相手が見つかった場合には、申請を取り下げて売却することができます。
つまり、
「国庫帰属を検討すること」
と、
「民間で引き受けてくれる人を探すこと」
は、必ずしも二者択一ではありません。
難しい不動産ほど、最初から出口を一つに決めない。
一般の第三者から見た価値だけではなく、隣接地の所有者から見た価値も考えてみる。
その一方で、国庫帰属をはじめとする別の方法についても同時に調べてみる。
私たちは、そのように複数の可能性を動かしながら、その不動産にとって一番現実的な出口を探していくことが大切だと考えています。
4.自分の不動産だけで考えず、隣接地と一緒に活用方法を考えてみる
前項では、一般の第三者にとっては利用しにくい不動産でも、隣接地の所有者にとっては違った価値を持つ可能性があることを書きました。
ここでは、もう少し視点を広げてみたいと思います。
隣接地の所有者へ相談する目的は、
「この不動産を買ってもらう」
ことだけではありません。
私たちが活用の難しい不動産について考えるときには、
「自分の不動産だけで考えるのをやめたら、何か違う可能性が見えてこないか」
という視点も持つようにしています。
例えば、単体では面積が小さい。
間口が狭い。
形が悪い。
道路への出入りがしにくい。
駐車スペースが確保できない。
こうした不動産は、その不動産だけを見ている限り、問題を解決できないことがあります。
ところが、隣接する不動産と一緒に考えると、条件が変わることがあります。
面積が広がる。
間口が広がる。
土地の形が整う。
道路への出入りを考え直せる。
駐車場を確保できる。
建物配置の自由度が変わる。
管理しやすくなる。
将来的な売却の可能性が変わる。
もちろん、隣接地と一体で考えれば必ず問題が解決するわけではありません。
市街化調整区域であれば、その制限がなくなるわけではありません。
農地であれば、農地法上の手続きが不要になるわけでもありません。
接道や建築についても、それぞれ法令上の確認が必要です。
それでも、
「単体では難しい」
というところで思考を止めず、
「周囲まで含めたらどうなるのか」
と考えてみる価値はあります。
不動産は、隣り合っているだけで互いに影響を受けるものだからです。
例えば、100㎡の土地だけでは利用方法が限られていても、隣接する300㎡と合わせて400㎡になれば、違った利用方法が考えられるかもしれません。
反対に、広い土地であっても道路へ接する部分が極端に狭ければ、面積の割に利用しにくいことがあります。
そのような場合、隣接地との関係を見直すことで、間口や動線について別の可能性が生まれることがあります。
そして、ここには「利用方法が増える」ということ以外にも、もう一つ大きな意味があります。
それは、
「工事の仕方そのものが変わる可能性がある」
ということです。
活用の難しい不動産では、造成工事、伐採工事、解体工事などに大きな費用がかかることがあります。
このような工事は、一般的に狭い現場を一件だけ施工するよりも、ある程度まとまった広い現場として施工できた方が、作業効率が上がる可能性があります。
例えば、自分の土地だけを造成するのではなく、隣接地所有者も同じ時期に造成を考えているのであれば、二者でまとめて工事を発注する方法も考えられます。
さらに三者の土地まで一体として工事できるのであれば、より大きな工事として発注できる可能性があります。
造成工事でも、
重機を現場へ搬入する。
土砂を搬入する。
残土を搬出する。
整地する。
排水を考える。
といった作業が必要になります。
一件だけのために重機や車両を手配する場合と、隣接する複数の土地をまとめて施工する場合では、工事会社側の作業効率も変わります。
その結果、工事全体の単価が抑えられ、所有者一人当たりの負担が軽減される可能性があります。
伐採工事についても同じです。
小さな山林を一件だけ伐採する場合でも、
伐採する作業員。
重機。
伐採した木を運搬する車両。
処分費用。
現場までの移動や搬入。
といった費用が発生します。
ところが、隣接する二つ、三つの土地を一度に伐採できるのであれば、一つの現場として作業計画を組める可能性があります。
一人の所有者がすべて負担するのではなく、関係する所有者がそれぞれ必要な部分について費用を負担することで、結果として一人当たりの工事費を抑えられることも考えられます。
解体工事も同様です。
隣り合う土地に古い建物が複数残っている場合、それぞれが別々の時期に解体業者へ依頼するよりも、条件が合えば同じ時期にまとめて施工した方が効率的なことがあります。
重機の搬入。
養生。
廃材の分別。
運搬。
処分。
現場管理。
こうした作業を一体で進められれば、工事会社にとっても効率が良くなります。
もちろん、建物の構造や廃棄物の量、アスベストの有無などによって工事費は大きく変わりますので、必ず安くなるとは限りません。
それでも、
「それぞれが別々に工事するしかない」
と最初から決めつける必要はありません。
そして、もう一つ非常に大きいのが、道路条件です。
道路が狭い不動産では、大型車両が現場まで入れないことがあります。
大型ダンプが入れない。
大型の重機を積んだ車両が入れない。
伐採した木材を大型車両で運び出せない。
そうなると、小さな車両で何度も往復したり、小型の重機で時間をかけて作業したりしなければならなくなります。
これは、工事費が高くなる大きな要因の一つです。
ところが、自分の土地だけを見ると狭い道路からしか出入りできなくても、隣接地まで含めて考えた場合、全体として幅員の広い道路に接する形になることがあります。
もし、その広い道路側から工事車両が進入できるようになれば、状況は大きく変わります。
大型車両を使える。
大きな重機を搬入できる。
土砂や廃材を一度に多く運べる。
伐採した木材を効率よく搬出できる。
車両の往復回数を減らせる。
作業員の作業時間も短縮できる。
こうして作業効率が大きく向上すれば、工事費にも良い影響が出る可能性があります。
つまり、隣接地と一緒に考えるということは、
「土地の面積が広がる」
というだけではありません。
「工事がしやすくなる」
「大型車両が使えるようになる」
「工事をまとめて発注できる」
「一人当たりの負担を軽くできる可能性がある」
というところまで考えることができます。
これは、不動産の活用を考えるうえで非常に現実的な視点です。
山林についても同じです。
単独の山林として見れば、
「伐採費用がかかる」
「進入路が狭い」
「利用目的が見つからない」
という不動産でも、隣接する土地と一緒に考えることで、
「広い道路側から大型車両を入れられないか」
「伐採工事をまとめて発注できないか」
「伐採後の土地を一体として利用できないか」
という新しい検討ができます。
農地についても、一般の第三者に売却することが難しくても、隣接する農地を耕作している方であれば、既存の農地と一体で利用できる可能性があります。
空き家や古い建物が残っている不動産でも、隣接地所有者にとっては、建物そのものよりも、その敷地を取得することに意味がある場合があります。
つまり、不動産の価値は、その不動産の中だけで決まるとは限りません。
周囲との関係によって変わることがあります。
そして、その変化は、
「売却価格」
「利用方法」
だけではなく、
「工事費」
「作業効率」
「管理コスト」
にまで及ぶ可能性があります。
これは、活用が難しい不動産を考えるときに非常に重要な視点だと思います。
隣接地所有者との話し合いも、
「こちらの不動産を買ってください」
だけで終わらせる必要はありません。
例えば、
「お互いの不動産を一緒に考えた場合、何か違う使い方ができないでしょうか」
「それぞれで工事するのではなく、一緒に工事を発注したら負担を抑えられないでしょうか」
というところから話を始めてもよいと思います。
隣接地所有者がこちらの不動産を取得する。
こちらが隣接地の一部を取得する。
土地の一部について売買を検討する。
将来的に一体として売却する。
利用方法について一緒に検討する。
造成・伐採・解体などの工事を共同で発注する。
場合によっては、このような発想も出てくるかもしれません。
どの方法が適しているかは、不動産によってまったく違います。
大切なのは、
「自分が所有している範囲の中だけで問題を解決しなければならない」
と思い込まないことです。
実際のご相談でも、所有者の方はどうしても、
「自分の土地をどう売るか」
「自分の建物をどう処分するか」
というところから考えます。
当然のことだと思います。
しかし、私たちが現地へ行くときには、対象不動産だけを見るのではなく、その周囲もできるだけ見るようにしています。
隣は誰が使っているのか。
どのような土地利用をしているのか。
隣接地と高低差はあるのか。
道路との関係はどうなっているのか。
周辺に同じような土地はないか。
隣地と合わせた場合、形状はどう変わるのか。
工事をするとしたら、どこから重機や車両を入れるのか。
広い道路へ抜ける方法はないのか。
隣接地と共同で工事を行った場合に、施工条件が改善する可能性はないのか。
対象不動産だけではなく、周辺まで見ることで初めて気付くことがあります。
だから第2項でも、
「資料を見る。現地を見る。周囲を見る。」
と書きました。
周囲を見ることも、不動産調査の大切な一部だと考えているからです。
そして、このような一体利用を考える場合にも、最初から測量や造成工事などに多額の費用をかける必要はありません。
まず公図を見てみる。
航空写真を見てみる。
現地を歩いてみる。
隣接地との位置関係を確認してみる。
道路との関係を見る。
工事車両の進入経路を考えてみる。
そして、
「もし一緒に考えたらどうなるだろう」
という簡単な仮説を立ててみる。
その段階で可能性がありそうなら、隣接地の所有者へ相談してみる。
話が進みそうになったところで、必要に応じて測量、行政への確認、工事会社への相談、具体的な計画へ進めばよいと思います。
最初から完成した計画を作る必要はありません。
むしろ、隣接地の所有者が何を考えているのか分からない状態で、こちらだけが費用をかけて詳細な計画を作っても、相手にその意思がなければ意味がありません。
まず可能性を探る。
話をしてみる。
反応を見る。
必要であれば、工事会社にも概算を聞いてみる。
そのうえで必要なところへ費用をかける。
この順序が大切です。
また、隣接地との一体利用を考えることは、必ずしも「売却するため」だけではありません。
例えば、所有者自身が引き続き一部を利用する方法が見つかるかもしれません。
隣地所有者と協力することで管理負担を減らせるかもしれません。
複数の不動産をまとめることで、第三者へ売却しやすくなる可能性もあります。
工事費を共同で負担することで、一人では難しかった整備が現実的になる可能性もあります。
逆に、一つの不動産を分けて考えた方がよい場合もあります。
つまり、
「全部売る」
「全部残す」
という二択でもありません。
難しい不動産ほど、所有している範囲や現在の形にとらわれず、いったん全体を俯瞰してみることが重要です。
これは、土地だけの話ではありません。
古い建物が複数ある不動産。
自宅と貸家が同じ敷地内にある不動産。
長年使っていない倉庫が残っている不動産。
会社が複数の土地や建物を所有している場合。
相続によって複数の不動産を引き継いだ場合。
こうしたケースでも、
「この一つをどうするか」
だけではなく、
「所有している不動産全体をどうするか」
という視点に変えることで、答えが変わることがあります。
売れる部分だけ先に売ってしまった結果、残った不動産がさらに使いにくくなることもあります。
反対に、単体では売却が難しい不動産を、周辺の不動産との関係まで含めて考えたことで、処分や活用の方法が見えてくることもあります。
だから私たちは、
「売れない不動産だから値段を下げる」
というところから始めるのではなく、
「この不動産だけで考える必要があるのだろうか」
というところまで一度考えてみます。
単体では難しい。
それなら隣接地と一緒に考えてみる。
隣接地の所有者にも相談してみる。
周辺まで含めて別の利用方法がないか考えてみる。
造成・伐採・解体などについても、共同で進めた方が合理的ではないか考えてみる。
そして同時に、売却や行政制度、相続土地国庫帰属制度など、別の出口についても調べてみる。
ここでも、一つの方法だけに絞る必要はありません。
隣接地との一体利用について話をしている間に、相続土地国庫帰属制度について法務局へ相談してもよいと思います。
国庫帰属について調べている間に、隣接地所有者から、
「それなら私が引き取ってもいい」
という話が出てくるかもしれません。
あるいは、
「自分が買うことはできないけれど、一緒に売却するなら考えてもよい」
「造成工事だけなら一緒にやってもよい」
「伐採するならこちらも同じ時期にお願いしたい」
という話になるかもしれません。
どの可能性が先に動くかは、実際に動いてみなければ分かりません。
だからこそ、
「Aが駄目だったらB」
「Bも駄目だったらC」
と、一つずつ何年もかけて試すのではなく、可能性のある方法は同時に動かしてみる。
その中から具体的な話が出てきたところで、費用、時間、手間、将来性などを比較し、所有者にとって最も良い方法を選ぶ。
難しい不動産ほど、私たちはこのような考え方が必要だと思っています。
不動産を「その一筆」「その一棟」だけで見ない。
周囲まで含めて見る。
そして、所有者一人だけで答えを出そうとせず、隣接地の所有者とも一緒に考えてみる。
それだけで、これまで見えていなかった活用方法が見つかることがあります。
単体では難しい不動産でも、周囲との関係を変えることで活路が生まれる可能性がある。
さらに、施工範囲や進入条件が変わることで、造成・伐採・解体といった実際の負担まで軽減できる可能性がある。
私たちは、難しい不動産の相談ほど、その可能性まで探してみることが大切だと考えています。
5.相続土地国庫帰属制度を考えることと、ほかの可能性を探すことは両立できます
ここまで、
一般市場での売却。
隣接地所有者への相談。
隣接する不動産との一体利用。
造成、伐採、解体などの共同発注。
といった方法について書いてきました。
しかし、相続した土地について、
「どうしても利用する予定がない」
「売却することも難しい」
「管理を続けることが負担になっている」
「子どもの世代には残したくない」
という場合には、もう一つ検討しておきたい制度があります。
相続土地国庫帰属制度です。
これは、一定の要件を満たした相続土地について、所有者が国へ申請し、承認を受け、負担金を納付することによって、その土地を国庫に帰属させることができる制度です。
ただ、私たちはこの制度について、
「売れなかった土地の最後の手段」
とだけ考える必要はないと思っています。
また、
「国庫帰属制度を検討するのであれば、もう売却活動はやめなければならない」
ということでもありません。
ここは、今回の記事で特にお伝えしたいところです。
国庫帰属について調べながら、隣接地の所有者にも相談してよい。
国庫帰属の相談を進めながら、一般市場で買主を探してもよい。
農地であれば、農地として利用してくれる人がいないか調べてもよい。
森林であれば、森林として別の管理方法がないか考えてもよい。
つまり、
「国庫帰属か、売却か」
という二者択一で考える必要はありません。
実際、法務省のQ&Aでも、国庫帰属以外の土地の活用・処分方法として、民間での売買や贈与、地方公共団体等への寄附、農地であれば農地中間管理機構、森林であれば森林経営管理制度などが案内されています。
国の制度そのものが、国庫帰属だけを唯一の方法としているわけではないのです。
そして、さらに重要なのが、国庫帰属の申請をした後の扱いです。
申請をした後に、
「この土地を買いたい」
という相手が見つかった場合には、売却前に国庫帰属の申請を取り下げたうえで、売却することができます。
これは非常に重要なポイントだと思います。
例えば、
隣接地所有者へ手紙を出す。
法務局へ相続土地国庫帰属制度について相談する。
一般市場での売却可能性も確認する。
この三つを同じ時期に進めても構わないわけです。
そして途中で隣接地所有者から、
「それなら私が引き取りましょう」
という話が出れば、そちらを検討することができます。
一般の第三者から購入希望が出れば、その条件を検討することもできます。
一方、民間での活用や処分の話が進まなければ、国庫帰属の検討をそのまま進めることもできます。
一つの出口が閉じるまで、ほかの出口を待つ必要はありません。
むしろ、処分が難しい土地ほど、
「複数の出口を同時に動かしてみる」
ことが大切なのではないかと思います。
私たちが実際にご相談を受けている中でも、
「いくらでもいいから売りたい」
というお話から始まって、詳しくお聞きすると、
「本当は売却代金が欲しいわけではない」
ということがあります。
高く売ることよりも、
草刈りを続けなくてよい状態にしたい。
固定資産税を払い続ける状態を終わらせたい。
遠方まで土地を見に行く必要をなくしたい。
将来、子どもに同じ問題を引き継がせたくない。
こうしたことが、本当の目的になっているケースです。
この場合には、不動産会社としても、
「それでは値段を下げてもう少し売り続けましょう」
という提案だけでは十分ではないと思っています。
その方が本当に望んでいることが、
「売却」
なのか、
「活用」
なのか、
「管理負担の軽減」
なのか、
「所有そのものを終わらせること」
なのか。
そこを整理する必要があります。
仮に、
「多少費用がかかっても構わないので、自分の代で整理したい」
ということが一番の目的なのであれば、国庫帰属制度について調べてみる意味があります。
ただし、国庫帰属制度も無料で利用できる制度ではありません。
承認申請には、一筆につき14,000円の審査手数料が必要です。
複数筆をまとめて申請しても審査手数料は軽減されません。
また、途中で申請を取り下げた場合や、申請が却下・不承認になった場合にも、納付した審査手数料は返還されません。
さらに、承認された場合には、国がその土地を管理するための費用として負担金を納付する必要があります。
つまり、
「国に無料で土地を引き取ってもらえる制度」
ではありません。
ですから、
国庫帰属制度を使った場合にどのくらい費用がかかるのか。
隣接地所有者へほぼ無償で譲った場合にはどのくらい費用がかかるのか。
売主側で登記費用などを負担して譲渡した方が安いのか。
管理を続けた場合、今後何年間でどのくらい費用がかかるのか。
こうしたものを比較してみることが重要です。
例えば、年間数万円の固定資産税や草刈り費用がかかっている土地を、今後10年、20年所有し続けるのであれば、その累計額も考える必要があります。
所有しているだけでお金がかかる不動産の場合には、
「いくらで売れるか」
だけではなく、
「この不動産を今後所有し続けると、いくらかかるのか」
という視点も必要になります。
そして、
売却代金。
処分費用。
今後の維持管理費。
手続きにかかる時間。
家族への将来負担。
こうしたものを全体で比較して、所有者にとって一番合理的な方法を考えるべきだと思います。
また、第4項で書いた「隣接地と一緒に考える」という考え方は、実は相続土地国庫帰属制度の中にもあります。
法務省のQ&Aでは、隣接する複数の土地について、それぞれが同じ土地区分である場合には、一定の条件のもとで、それらを一筆の土地とみなして負担金を算定する申出ができるとされています。
さらに、隣接地の所有者が別の方であっても、共同してこの申出をすることができます。
これは興味深い仕組みです。
例えば、隣り合った土地について、
「自分も相続したが使っていない」
「隣の方も同じように困っている」
ということがあるかもしれません。
その場合には、
「それぞれ自分の土地だけで考える」
のではなく、
「一緒に国庫帰属制度を検討できないか」
という可能性まで考えられます。
もちろん、土地の状況や土地区分などによって条件が異なりますので、実際には法務局への確認が必要です。
しかし、
造成工事を共同で考える。
伐採工事を共同で考える。
解体工事を共同で考える。
隣接地をまとめて売却することを考える。
そして場合によっては、国庫帰属についても隣接地所有者と一緒に考える。
こうして見ていくと、
「自分の不動産は、自分一人だけで何とかしなければならない」
とは限らないことが分かります。
ここでも大切なのは、最初からお金をかけすぎないことです。
「国庫帰属制度を使うことに決めたから、すぐ測量しよう」
「建物を壊そう」
「全部伐採してしまおう」
と先に進めるのではなく、まず制度上の可能性を確認する。
法務局へ相談する。
現在ある資料を確認する。
現地の状況を整理する。
そして、
「この土地の場合、何が問題になる可能性があるのか」
を把握してから、必要な費用をかけていくべきだと思います。
国庫帰属制度の相談では、登記事項証明書、地図の写し、所有権や境界に関する資料、土地の形状や全体が分かる写真などを用意して相談することが推奨されています。
さらに、境界確定図や測量成果についても、すでに存在する場合には提出することが望ましいものの、承認申請時の必須書類ではありません。
ですから、
「国庫帰属を検討するためには、まず何十万円もかけて測量しなければならない」
と最初から考える必要はありません。
まず相談してみる。
それから必要なことを確認する。
そして同時に、ほかの出口についても動いてみる。
私たちは、この順序が非常に重要だと考えています。
相続土地国庫帰属制度を検討することは、
「この土地はもう何にも使えない」
と決めることではありません。
売却を諦めることでもありません。
隣接地所有者との話を止めることでもありません。
むしろ、
「この土地をどう整理するか」
という選択肢を一つ増やすことです。
そして、複数の選択肢を持った状態で動いてみる。
売却が一番良い条件で進めば、売却を選ぶ。
隣接地所有者に引き受けてもらえるのであれば、それを選ぶ。
一体利用によって新しい活用方法が生まれれば、それを検討する。
どれも難しく、国庫帰属が最も合理的なのであれば、その手続きを進める。
大切なのは、
「最初に一つを選び、それ以外を捨てること」
ではありません。
難しい土地ほど、出口を一つに決めない。
可能性があるものは、できる範囲で同時に動かしてみる。
その中から、所有者にとって一番負担が少なく、将来に問題を残さない方法を選ぶ。
相続土地国庫帰属制度も、そのための大切な選択肢の一つだと、私たちは考えています。
6.相続土地国庫帰属制度は、どんな土地でも国が引き取る制度ではありません
ここまで相続土地国庫帰属制度を、一つの出口として考えてきました。
ただし、この制度については、
「相続した土地なら、申請すれば国が引き取ってくれる」
と考えるのは適切ではありません。
国が引き取った後には、その土地を国が管理していかなければなりません。
そのため、管理や処分に大きな費用や手間がかかる土地、第三者との権利関係に問題がある土地、境界を巡って争いがある土地などについては、一定の制限が設けられています。
ですから、
「この土地は売れないから国へ」
と簡単に決めるのではなく、その土地が制度上どのような問題を抱えているのかを一つずつ確認していく必要があります。
まず、制度を利用できる人について確認する必要があります。
相続土地国庫帰属制度は、原則として相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した方が利用する制度です。
制度が始まった令和5年4月27日より前に相続した土地についても対象になります。
また、相続登記がまだ完了していない場合でも、相続などによって取得したことを証明できれば申請できる場合があります。
一方で、共有となっている土地については注意が必要です。
共有地を国庫へ帰属させる場合には、共有者全員で申請しなければなりません。
一人は国庫帰属を希望している。
しかし、もう一人は所有を続けたい。
このような場合、一人だけで共有地全体について申請することはできません。
私たちが実際に相談を受ける不動産でも、共有名義になっているものは珍しくありません。
そのような場合には、国庫帰属制度以前に、
「共有者全員が、この不動産を今後どうしたいのか」
という意思を確認するところから始める必要があります。
次に、建物です。
これは非常に分かりやすい条件の一つです。
建物が存在する土地は、原則としてそのまま国庫帰属を申請することはできません。
しかも、
「建物が未登記だから大丈夫」
ということではありません。
登記の有無ではなく、現実に建物が存在するかどうかで判断されます。
法務省のQ&Aでも、現に建物が存在する場合には承認申請することはできず、原則として建物を取り壊した上で申請する必要があるとされています。
これは、空き家を相続された方にとって非常に重要な点です。
例えば、
「古い家が残っていて、土地も売れないので国に引き取ってもらいたい」
という場合、そのままでは難しい可能性があります。
まず建物をどうするかという問題が出てきます。
そして、ここで第2項で書いた考え方が重要になります。
国庫帰属を検討するからといって、確認もせずにすぐ数百万円をかけて建物を解体するべきだとは思いません。
建物を解体したとしても、土地に別の問題があれば、国庫帰属が認められない可能性があるからです。
まず法務局へ相談する。
土地そのものに別の問題がないか確認する。
隣接地所有者への売却や譲渡の可能性も調べる。
そのうえで、
「解体費用をかけてでも国庫帰属を目指すことが合理的なのか」
を判断することが重要です。
権利関係についても注意が必要です。
土地に、国以外の第三者が使用したり収益したりする権利が設定されている場合には、申請できないことがあります。
例えば、地役権が設定された承役地については、原則として却下の対象となります。
また、森林経営管理法による経営管理権が設定されている森林についても、その権利が設定されたままでは申請できないとされています。
ですから、登記事項証明書などを確認し、
「所有者は自分だから問題ない」
というところだけではなく、
「ほかの人や団体にどのような権利が設定されているか」
まで見る必要があります。
次に、境界です。
ここについては、誤解されている方も多いと思います。
「国庫帰属をするなら、必ず境界確定測量をしなければならない」
というわけではありません。
以前にも書いたとおり、境界確定図や測量成果自体は、承認申請の必須書類ではありません。
一方で、
「どこからどこまでが自分の土地なのか分からない」
という状態でよいわけでもありません。
申請する土地の範囲を現地で示すことができ、隣接地所有者との間でも、その範囲について認識が一致している必要があります。
筆界未定の土地や地図がない土地であっても、それだけで直ちに申請できないわけではなく、申請者が土地の範囲を明確に示し、隣接地所有者との認識が一致していれば、個別に判断されます。
逆に、
「ここまでが自分の土地だと思っている」
という申請者側の認識に対して、
隣地所有者から、
「そこは違います」
という異議が出れば、問題になります。
だからこそ、
測量をしたかどうかだけではなく、
「土地の範囲について争いがないか」
が重要なのです。
山林や農地についても、最初から対象外と考える必要はありません。
農地についても承認申請は可能です。
森林についても承認申請は可能です。
農地については、農業委員会が農地の権利調整を行っているため、事前に農業委員会へ相談することもできます。
ですから、
「農地だから国庫帰属できない」
「森林だから国庫帰属できない」
という理解は正しくありません。
ただし、その土地の状態によっては別の問題が出てきます。
例えば樹木です。
山林だから樹木をすべて伐採しなければならない、という制度ではありません。
しかし、放置すると倒木のおそれがあり、民家や道路などへ危険を及ぼす樹木や、周辺へ侵入するおそれがあり定期的な伐採が必要な竹などについては、通常の管理を妨げるものとして問題になる可能性があります。
法務省のQ&Aでも、倒木のおそれのある枯れた樹木や、定期的な伐採が必要な竹などが、管理を阻害するものの例として挙げられています。
つまり、
「木があるからダメ」
ではありません。
その木を国が取得した後、
「通常の管理で済むのか」
「継続的に特別な管理が必要になるのか」
というところが重要になります。
地下に何があるのかという問題もあります。
私たちが不動産取引で注意するものとして、
古い建物の基礎。
コンクリート片。
建築廃材。
使われていない水道管。
浄化槽。
井戸。
大きな石。
などがあります。
こうしたものが地中に存在し、除去しなければ通常の管理や処分ができない場合には、不承認となる可能性があります。
法務省のQ&Aでも、産業廃棄物、建築資材、既存建物の基礎やコンクリート片、古い水道管、浄化槽、井戸、大きな石などが例示されています。
ただし、
「地下に何もないことを証明するため、すべて掘削調査しなければならない」
ということでもありません。
地下に有体物が存在しないことを証明する書面は、必須添付書類ではないとされています。
一方、過去の利用状況などから地下埋設物が疑われる場合には、追加資料を求められることがあります。
ここでも、
「念のため全部掘って調べよう」
と最初から費用をかけるのではなく、まず過去の利用状況や現地を確認することが大切です。
道路についても同じです。
例えば、他人の土地を通らなければ道路へ出られない、いわゆる袋地があります。
一般の不動産売買では、大きなマイナス要因になることがあります。
しかし、
「袋地だから国庫帰属できない」
というわけではありません。
法務省のQ&Aでは、袋地についても申請可能とされています。
ただし、土地へ出入りするための通路について、通行を妨害されているような場合には引き取ることができないとされています。
これは非常に分かりやすい例だと思います。
見た目の条件だけで、
「道路が悪いからダメ」
と決めるのではなく、
「国が取得した後、実際にその土地へ入り、管理することができるのか」
という視点で考える必要があります。
崖についても同じです。
崖があるだけで直ちに不承認になるわけではありません。
実際には、崩落の危険性などを資料や実地調査によって確認し、周辺への被害を防ぐために特別な工事などが必要になるかどうかが問題になります。
つまり、
山林だからダメ。
農地だからダメ。
袋地だからダメ。
崖があるからダメ。
測量していないからダメ。
というように、一つの条件だけで判断する制度ではありません。
一方で、
建物がある。
共有者全員の意思が揃っていない。
第三者の権利が残っている。
境界について争いがある。
危険な樹木や工作物がある。
地下に管理を阻害する埋設物がある。
土地そのものに災害等の危険があり、大掛かりな対策が必要になる。
こうした問題については、具体的に確認していく必要があります。
そして、ここでもう一つ重要なことがあります。
申請時点で問題が見つかったからといって、必ずそこで終わりとは限りません。
法務省のQ&Aでは、承認申請後に却下要件や不承認要件に該当する事情が判明した場合でも、その事情を除去するための対応を行うことは可能とされています。
ただし、相当の期間内に改善できない場合には、引き取ってもらうことはできません。
例えば、
建物を撤去する。
問題となる工作物を取り除く。
境界について隣接地所有者と話し合う。
権利関係を整理する。
こうした対応によって、申請へ進める可能性が出てくる場合もあります。
だからこそ私たちは、
「この土地は国庫帰属できる」
「この土地はできない」
と、不動産会社だけで簡単に断定することは適切ではないと考えています。
私たちにできるのは、
現在の不動産の状態を確認する。
問題になりそうな点を整理する。
登記や公図、現地を確認する。
必要に応じて行政や専門家へ確認する。
そして、相続土地国庫帰属制度を利用する可能性があるのであれば、法務局へ事前相談してみる。
そこまでです。
法務局への相談段階で、
「引き取ることができそうです」
という見解が示されたとしても、正式な承認が保証されるわけではありません。
正式申請後には実地調査などが行われ、その結果によって相談段階とは異なる判断になる場合もあります。
だから、
国庫帰属制度があるから安心。
売れなければ国へ渡せばよい。
という考え方ではなく、
「自分の土地の場合、本当にこの制度を利用できる可能性があるのか」
を早い段階から調べておくことが大切だと思います。
そして同時に、これまで書いてきた方法も止めないことです。
隣接地所有者へ相談する。
一般市場での可能性を考える。
隣接する不動産との一体利用を考える。
造成、伐採、解体などを共同で進められないか考える。
農地や森林であれば、それぞれ別の活用制度についても調べる。
国庫帰属について法務局へ相談する。
一つに決める必要はありません。
むしろ、制度の条件が細かいからこそ、
「国庫帰属だけに賭ける」
のではなく、複数の出口を同時に動かしておくことが重要です。
相続土地国庫帰属制度は、活用や処分が難しい土地を相続した方にとって、非常に重要な選択肢だと思います。
しかし、
「どんな土地でも国が引き取ってくれる制度」
ではありません。
その土地がどのような状態なのか。
何が問題になりそうなのか。
その問題は解消できるのか。
解消するために、どのくらい費用が必要なのか。
そして、その費用をかけて国庫帰属を目指すことが、ほかの方法と比較して本当に合理的なのか。
そこまで考えた上で利用を検討する制度だと、私たちは考えています。
7.難しい不動産ほど、最初から出口を一つに決めない
ここまで、活用や処分が難しい不動産について、私たちが実際の相談でどのようなことを考えているのかを書いてきました。
市街化調整区域。
農地。
山林。
道路条件が悪い土地。
形状が使いにくい土地。
共有名義の不動産。
古い建物が残っている不動産。
長期間利用されず、管理だけが続いている不動産。
こうした不動産について相談を受けると、
「売れますか」
「いくらなら売れますか」
「買い取ってもらえますか」
「国に引き取ってもらえますか」
というご質問をいただきます。
もちろん、それぞれ大切な質問です。
しかし私たちは、最初からそのどれか一つだけを答えにしてしまうことが、必ずしも良いとは考えていません。
例えば、
一般市場で売却する。
隣接地の所有者へ相談する。
近隣で利用できる方を探す。
条件を大きく見直して譲渡する。
隣接地と一体で活用できないか考える。
農地や森林であれば、その状態に応じた活用方法を調べる。
行政への寄附などについて可能性を確認する。
相続によって取得した土地であれば、相続土地国庫帰属制度について法務局へ相談する。
考えられる方法はいくつもあります。
そして大切なのは、
「まず売却を1年間やってみて、ダメだったら隣地へ相談し、それでもダメなら国庫帰属を考える」
というように、一つずつ順番に進める必要はないということです。
一つの方法が失敗するまで、次の方法を待つ必要はありません。
一般市場での可能性を調べながら、隣接地所有者にも相談する。
隣接地所有者と話をしながら、行政上どのような利用ができるのかも確認する。
相続した土地であれば、それらと並行して法務局へ相続土地国庫帰属制度について相談してみる。
それぞれを同時に動かしてみればよいと思います。
実際、相続土地国庫帰属制度についても、申請後に売却相手が見つかった場合には、売却前に申請を取り下げることができます。
つまり、
「国庫帰属を検討すること」
と、
「売却や活用の可能性を探すこと」
は、どちらか一方を選ばなければならない関係ではありません。
国庫帰属の可能性を調べながら、民間での出口も探す。
私たちは、この考え方が非常に大切だと思っています。
特に、活用や処分が難しい不動産では、
「誰に売るのか」
という視点を変えるだけで、状況が変わることがあります。
一般の第三者から見れば、
道路が狭い。
面積が小さい。
形が悪い。
単独では使いにくい。
造成費用がかかる。
こうした条件は、そのままマイナス要因になります。
しかし隣接地の所有者から見ると、評価が変わることがあります。
自分の土地と合わせれば面積が広がる。
道路への間口を改善できるかもしれない。
駐車場や庭、資材置場などとして利用できる可能性がある。
将来の建替えや土地利用を考えたときに、所有しておく意味が出てくる。
もちろん、実際にどのような利用ができるかは法令や土地の状況によって異なります。
それでも、
「単独の不動産としてどう評価されるか」
だけではなく、
「周囲の不動産と組み合わせたときにどうなるか」
という見方をすることには意味があります。
私たちはこれを、
「単体評価から一体評価へ」
という考え方で捉えています。
これは、以前の記事でもお伝えしてきた不動産活用の考え方と同じです。
目の前に空いている土地があるから、そこだけ売る。
古い建物があるから、すぐに壊す。
使っていない不動産だから、安くして処分する。
そうではなく、
「不動産全体を見たときに、何が一番良いのか」
を一度考えてみる。
今回のような活用が難しい不動産では、その視点をさらに周囲へ広げ、
「隣接地まで含めて考えたら、何か変わらないか」
というところまで考えてみます。
それでも難しい不動産はあります。
不動産会社だからといって、すべての不動産に買主を見つけられるわけではありません。
私たち自身、
「これは一般市場で買主を探すのはかなり難しい」
と判断することがあります。
その場合、無理に媒介契約をいただき、不動産ポータルサイトへ掲載し続けることが、本当に所有者のためになるとは限りません。
問い合わせがほとんど期待できない不動産を長期間掲載し、
「もう少し値段を下げてみましょう」
ということを繰り返す。
それだけでは、問題の本質は変わらないからです。
不動産は、価格を下げれば必ず売れるものではありません。
1円であっても、50万円であっても、その不動産を必要とする方がいなければ売買は成立しません。
これは、今回の記事で最もお伝えしたいことの一つです。
問題が、
「価格」
ではなく、
「需要」
にある場合があるからです。
だからこそ、買主を広く探すことだけが不動産会社の仕事ではないと、私たちは考えています。
誰なら、この不動産を必要とする可能性があるのか。
隣接地所有者ならどうか。
近隣の事業者ならどうか。
農地として使う人はいないか。
周囲の不動産と一体にしたらどうか。
別の活用方法はないか。
そして相続した土地であれば、国庫帰属という出口は考えられないか。
その不動産について、
「考えられる相手」
と、
「考えられる方法」
を増やしていく。
そこに、不動産会社としてお手伝いできることがあると思っています。
一方で、所有者側も、
「高く売ること」
だけを目標にしているとは限りません。
私たちが実際にお話を伺っていると、
「金額はいくらでも構わない」
「多少費用がかかっても整理したい」
「自分では使う予定がない」
「子どもたちにこの負担を残したくない」
というご相談があります。
この場合の目的は、
「不動産を高く売ること」
ではなく、
「自分の代で整理すること」
なのだと思います。
そうであれば、判断基準も変わります。
例えば100万円で売却できたとしても、測量、伐採、解体、造成などにそれ以上の費用が必要になるのであれば、本当にその方法が最善なのか考える必要があります。
反対に、ある程度の費用を負担することで隣接地所有者に引き受けてもらえるのであれば、それが所有者にとって合理的な解決になることもあります。
相続土地国庫帰属制度を利用するために一定の費用が必要になったとしても、将来にわたって管理を続けることと比較すれば、検討する意味がある場合もあるでしょう。
大切なのは、
「いくらで売れたか」
だけで成功か失敗かを判断しないことです。
何を目的としているのか。
高く売りたいのか。
管理負担をなくしたいのか。
相続問題を整理したいのか。
次の世代へ残したくないのか。
周囲の不動産と一緒に有効活用したいのか。
その目的によって、選ぶべき方法は変わります。
そして、もう一つ大切なことがあります。
活用や処分が難しい不動産ほど、最初から多額のお金をかけないことです。
とりあえず測量する。
とりあえず建物を解体する。
とりあえず山林を伐採する。
とりあえず整地する。
その後で考える。
私たちは、この順番には慎重であるべきだと思っています。
まず資料を見る。
現地を見る。
法令上の制限を確認する。
所有者の希望を聞く。
周囲の状況を見る。
隣接地との関係を考える。
国庫帰属を検討するのであれば、法務局へ相談してみる。
そのうえで、
「この費用をかければ、どの出口に近づくのか」
を考える。
必要性が見えてから、測量、解体、伐採、造成などへ進めばよいと思います。
費用をかけること自体が目的になってはいけません。
そして、不動産会社へ相談したからといって、必ず売却を依頼しなければならないわけでもありません。
私たちが調べた結果、
「弊社で一般の買主を探すよりも、まず隣地所有者へ相談した方がよいと思います」
「農業委員会へ相談した方がよいと思います」
「土地家屋調査士へ境界について相談した方がよいと思います」
「相続土地国庫帰属制度について法務局へ相談してみた方がよいと思います」
という回答になることもあります。
場合によっては、
「この不動産については、弊社で媒介をお引き受けしても、お役に立つことが難しいと思います」
とお伝えすることもあります。
それも一つの回答だと思っています。
媒介契約をいただくことが目的ではありません。
所有者が抱えている不動産について、
「次に何をしたらよいのか」
が少しでも見えることの方が大切です。
活用や処分が難しい不動産については、不動産会社によって考え方も異なると思います。
売却を中心に考える会社。
買取を中心に考える会社。
賃貸や管理を得意とする会社。
農地や山林を得意とする会社。
それぞれ違いがあります。
(有)ユーハイムでは、こうしたご相談をいただいたとき、
「いくらで売るか」
という話から始めるのではなく、
「なぜ難しいのか」
を一緒に整理するところから考えてみたいと思っています。
そして、
売却。
隣地への相談。
一体活用。
譲渡。
行政への相談。
専門家への相談。
相続した土地であれば相続土地国庫帰属制度。
考えられる出口をできるだけ並べてみる。
その中で、同時に動かせるものは動かしてみる。
どれか一つに可能性が見えてきたら、その時点で改めて比較して、一番現実的な方法を選ぶ。
難しい不動産ほど、最初から出口を一つに決めない。
私たちは、それが大切だと考えています。
不動産には、一つとして同じものはありません。
同じ市街化調整区域でも条件は違います。
同じ農地でも違います。
同じ山林でも違います。
同じように道路が狭い土地でも、隣接地との関係によって可能性は変わります。
そして、所有者が何を望んでいるのかによっても答えは変わります。
「売れないと思う」
「使い道がない」
「相続したけれど、どうしたらよいか分からない」
「子どもには残したくない」
そのような不動産があれば、最初から一つの結論を出す必要はありません。
まず、その不動産がどのような状態なのかを確認する。
なぜ活用や処分が難しいのかを整理する。
そして、考えられる出口をいくつか並べてみる。
売却できるかもしれない。
隣地所有者が引き受けてくれるかもしれない。
周囲と一体で考えれば活用できるかもしれない。
国庫帰属制度を利用できるかもしれない。
どれか一つに決めてから動くのではなく、
可能性のあるものを、できるところから同時に動かしてみる。
それでも難しければ、その時点でまた次の方法を考える。
私たちは、活用や処分が難しい不動産についても、まずはそのようなところから一緒に考えていきたいと思っています。
📩 お問い合わせ:info@yu-haim.jp
湯 田 圭 一(ゆだ・けいいち)
(有)ユーハイム 代表取締役。1972年、東京都西東京市生まれ。
宅地建物取引士として約25年にわたり不動産業に従事。
茨城県宅地建物取引業協会 水戸支部 幹事として、地域不動産業界の発展にも注力。
空き家対策、相続不動産、事業用地のマッチングなど、実務に即した現場提案に定評がある。