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2026年8月31日
活用したい
【賃貸借は、契約する前が大切です】~貸主と借主、それぞれの利益と責任を考える~

不動産の賃貸というと、
「いくらで貸すか」
「借りてくれる人がいるか」
という話が中心になりがちです。
もちろん、賃料は大切です。
しかし、私たちは長く不動産に携わり、住宅、事業用不動産、土地、建物の売買や賃貸、管理、投資など、さまざまな立場で不動産を見てきた中で、
「賃貸借は、家賃を決めれば終わりではない」
と考えています。
むしろ、良い賃貸借になるかどうかは、契約する前の段階でかなり決まると思っています。
借主は、契約前に現地を確認する。
貸主は、どこまで整備して引き渡すのかを明確にする。
修繕や設備について、誰が何を負担するのか話し合う。
使用方法を確認する。
改装や造作について決める。
保険について確認する。
退去時の取り扱いを決める。
そして、話し合った内容を書面にする。
ここまで行ったうえで契約する。
非常に当たり前のことのようですが、実際にはこの部分が曖昧なまま契約が始まり、後から、
「そこは貸主が直すと思っていた」
「そこは借主が負担すると思っていた」
「そんな使い方をするとは聞いていなかった」
「そこまで工事するとは思っていなかった」
という認識の違いが出てくることがあります。
最近、私たち自身も貸主という立場を経験する中で、改めて賃貸借の奥深さを感じる機会がありました。
今回は特定の契約や相手について書くのではありません。
その経験も踏まえながら、
「良い賃貸借とは何だろう」
ということを、不動産会社、貸主、投資家といういくつかの視点から考えてみたいと思います。
1.賃貸借は、契約前の確認から始まっています
私たちが賃貸借で最も大切だと考えていることの一つが、
「契約する前に、できるだけ確認しておく」
ということです。
特に事業用不動産では、借主によって建物の使い方が大きく異なります。
事務所として使う。
店舗として使う。
飲食店として使う。
倉庫として使う。
工場として使う。
宿泊施設として使う。
福祉施設として使う。
同じ建物であっても、使い方によって必要となる設備も工事も違います。
ですから、借主が契約前に現地を確認することは非常に重要です。
建物を見る。
部屋を見る。
水回りを見る。
電気設備を見る。
空調を見る。
階段を見る。
出入口を見る。
駐車場を見る。
道路を見る。
周辺環境を見る。
そして、
「自分たちが予定している使い方が本当にできるのか」
を自分たちの目で確認する。
写真だけを見る。
図面だけを見る。
不動産会社から説明を受ける。
それだけで契約するのではなく、原則として実際の利用者自身が現地を確認する。
私たちは、これは賃貸借の基本だと思っています。
特に事業用不動産であれば、
「借りてから考える」
では遅いことがあります。
借りた後になって、
「やはりこの設備が必要だった」
「この部分を直さなければ営業できない」
「想定していた使い方ができない」
ということになれば、貸主、借主双方にとって負担になります。
だからこそ、契約前の現地確認が重要なのです。
2.貸主側も「何をどこまで整備するのか」を明確にする
一方、貸主にも責任があります。
「現況で貸します」
という一言だけで、すべてを終わらせればよいとは思いません。
現在、建物がどのような状態なのか。
使用できる設備は何なのか。
故障している部分はないのか。
引渡しまでに貸主が行う工事はあるのか。
清掃はどこまで行うのか。
残置物はどうするのか。
設備として貸すものと、残置物として扱うものは何なのか。
貸主側でも、できるだけ整理しておくことが大切です。
例えば、
「給湯器は設備として使用できます」
というのであれば、故障時の扱いも考える必要があります。
反対に、
「古いエアコンは残しますが、設備としての性能保証はしません」
というのであれば、そのことも事前に説明しておいた方がよいでしょう。
建物の状態について貸主が把握している情報があるのであれば、できるだけ借主へ説明する。
借主も、それを踏まえて現地を確認する。
そのうえで、
「ここまでは貸主が直す」
「ここから先は現在の状態で引き渡す」
という線を引いておく。
この作業が大切だと思います。
3.「普通は貸主」「普通は借主」という考え方だけでは決められない
賃貸借で問題になりやすいのが、修繕です。
何か壊れた。
設備が動かない。
雨漏りした。
建具が傷んだ。
内装を変更したい。
新しい設備が必要になった。
そのとき、
「普通は貸主が直すでしょう」
「普通は借主が払うでしょう」
という話になることがあります。
しかし、特に事業用賃貸では、この「普通」という言葉だけで判断するのは難しいと思っています。
まず考えるべきなのは、
「何のために必要な工事なのか」
ということです。
建物そのものを維持するために必要な修繕なのか。
借主が行う事業のために必要な工事なのか。
ここを分けて考える必要があります。
例えば、建物の構造や耐久性に関わる重大な不具合であれば、貸主側で対応を検討するものが多くなります。
一方、
店舗独自の内装。
事業用の造作。
営業方法に合わせた設備。
特殊な配線。
特定用途のための改装。
看板。
事業上必要となる什器。
こうしたものは、借主の事業に伴うものです。
当然、案件によって判断は変わります。
しかし、すべてを一括して、
「建物のことだから貸主」
と考えるのも、
「借りているのだから借主」
と考えるのも適切ではありません。
何のための工事なのか。
誰が必要としているのか。
建物そのものに残るものなのか。
契約終了後にどのように扱うのか。
そういったことを一つずつ考えて決める必要があります。
4.借主が必要とする設備は、契約前にできるだけ洗い出す
事業用賃貸で特に重要なのが、この部分です。
借主側には、
「自分たちの事業を始めるために何が必要なのか」
を、できるだけ契約前に整理していただきたいと思っています。
例えば、
電気容量。
水道。
給排水。
給湯。
空調。
消防設備。
厨房設備。
換気設備。
インターネット回線。
看板。
駐車場。
搬入経路。
営業時間。
騒音。
臭気。
人の出入り。
必要となるものは事業によって全く異なります。
貸主は、借主がどのような事業をするのかについて一定の説明を受けることはできます。
しかし、その事業の専門家ではありません。
その事業を行ううえで、
「この設備が必要」
「ここまでの性能が必要」
「この工事が必要」
と判断できるのは、基本的には実際に事業を行う側です。
だからこそ、契約前に確認していただきたいのです。
後になって、
「営業するためにはこれが必要でした」
「この設備がなければ事業ができません」
となると、
「では誰が費用を負担するのか」
という新しい問題が生まれます。
契約前から分かっていたのであれば、
その費用も含めて賃借するのか。
貸主が一部整備するのか。
賃料を調整するのか。
借主負担で工事するのか。
あるいは、その物件を見送るのか。
事前に判断することができます。
だから私たちは、
「契約してから考える」
のではなく、
「契約する前に、できるだけ考える」
ことを大切にしています。
5.貸主と借主は、同じ不動産を違う立場から見ています
賃貸借を考えるとき、もう一つ理解しておきたいことがあります。
貸主と借主では、同じ建物を見ていても、見えているものが違うということです。
借主が事業者であれば、
この場所で売上を作れるか。
事業に使えるか。
賃料はいくらか。
初期費用はいくらか。
どこまで自由に使えるか。
ということを考えます。
一方、貸主は、
建物の維持。
税金。
保険。
将来の修繕。
借主が退去した後のこと。
次の募集。
建物の価値。
将来の売却。
なども考えています。
どちらが正しいという話ではありません。
立場が違うのですから、見ているものが違うのは当然です。
問題は、
「自分にとって都合のよい条件が、相手にとっても当然である」
と思ってしまうことです。
借主から見れば、
「ここを直してもらえればもっと使いやすい」
ということでも、
貸主から見れば、
「その工事は、この借主のためだけに必要なものではないだろうか」
と感じることがあります。
反対に、貸主から見れば、
「この状態で十分使える」
と思っていても、
借主から見れば、
「自分たちの事業では、この状態では使えない」
ということがあります。
だからこそ、契約前に話すのです。
相手の立場を想像するだけではなく、
直接確認する。
そして条件を擦り合わせる。
この作業こそが重要なのだと思います。
6.自由に使える物件ほど、ルールを明確にしておく
事業用不動産では、
「ある程度自由に改装して使ってください」
という貸し方もあります。
借主から見れば、非常に魅力的な条件だと思います。
自分たちの事業に合わせて、
内装を変更する。
壁を作る。
設備を追加する。
造作する。
使いやすいように建物を変える。
一般的な住宅賃貸では難しいことも、事業用不動産では認められる場合があります。
しかし、自由度が高いからこそ、契約前にルールを決めておく必要があります。
どこまで自由に変更してよいのか。
所有者の事前承諾が必要な工事は何か。
構造部分へ手を加えてよいのか。
設備を追加するときはどうするのか。
法令上の手続きは誰が確認するのか。
工事業者は誰が選ぶのか。
退去時に元へ戻すのか。
造作を残してよいのか。
こうしたことを決めておきます。
私たちは、
「自由に使える」
ことと、
「何をしてもよい」
ことは違うと考えています。
貸主も細かいことすべてに口を出さない。
借主も建物を自分の所有物のように扱わない。
その中間に、双方が納得できるルールを作る。
それが事業用賃貸では重要だと思います。
7.保険、保証、設備、原状回復まで契約前に確認する
契約条件というと、
賃料。
敷金。
契約期間。
このあたりに目が行きます。
しかし、実際の賃貸借では、もう少し細かい部分も重要です。
例えば保険です。
火災が起きたらどうするのか。
水漏れが起きたらどうするのか。
借主の営業によって第三者へ損害を与えたらどうするのか。
どのような保険へ加入するのか。
補償内容は十分なのか。
これも契約後ではなく、できるだけ契約前に確認したいことです。
保証についても同じです。
家賃債務保証会社を利用するのか。
連帯保証人を付けるのか。
敷金をいくら預かるのか。
事業規模に対して十分な保証なのか。
借主の事業内容や継続性はどうなのか。
設備についても、
貸主の設備なのか。
借主の設備なのか。
前の入居者が置いていった残置物なのか。
故障した場合に誰が交換するのか。
事前に決めておいた方がよいでしょう。
さらに退去時です。
原状回復をどこまで求めるのか。
造作は撤去するのか。
残してもよいのか。
廃棄物は誰が処分するのか。
残置物があった場合はどうするのか。
退去時の話を契約前にするのは、少し早いと感じる方もいるかもしれません。
しかし、私たちは反対だと思っています。
始まりを決めるときに、終わりも決めておく。
これが契約です。
8.良い契約は「細かい契約」ではなく「認識が揃っている契約」
条件を細かく決めるというと、
「貸主が借主を縛る」
ように感じられるかもしれません。
しかし、私たちが目指しているのはそういう契約ではありません。
細かい特約を大量に入れればよいとも思いません。
大切なのは、
貸主と借主の認識が揃っていることです。
貸主はこう考えている。
借主も同じように理解している。
その状態を作る。
そして、その内容を書面にしておく。
口頭では、
「そのあたりは相談しながらやりましょう」
という話になることがあります。
もちろん、すべての未来を契約前に想定することはできません。
予想していなかった故障も起きます。
社会状況も変わります。
借主の事業内容が変わることもあります。
ですから、すべてを契約書だけで完結させることはできません。
それでも、契約時点で分かっていることについては、できるだけ曖昧にしない。
特に、
誰が負担するのか。
誰が判断するのか。
誰が維持管理するのか。
契約終了時にどうするのか。
このあたりは整理しておく。
これだけでも、後の認識違いはかなり減らせると思います。
9.書面化することは、相手を信用していないという意味ではありません
長年お付き合いしている方。
知人から紹介された方。
取引先。
友人。
親族。
こうした関係では、
「そこまで細かく契約書に書かなくても大丈夫でしょう」
となることがあります。
しかし、私たちはむしろ、関係を大切にしたい相手ほど、きちんと書面にした方がよいと思っています。
口頭の約束は、人によって覚え方が違います。
時間が経てば、記憶も変わります。
担当者が変わることもあります。
会社同士の契約であれば、経営者が変わる可能性もあります。
最初は良好な関係でも、何か問題が起きたときには、お互いに自分の記憶を基準に考えます。
だからこそ書面が必要です。
「あなたを信用していないから書く」
のではありません。
「お互いの認識を残しておくために書く」
のです。
私たちは、これも賃貸借の大切な基本だと思っています。
10.賃料が高ければ、良い賃貸借とは限らない
貸主からすると、
「できるだけ高く貸したい」
という気持ちは当然あります。
しかし、不動産を長く管理していると、
「一番高い賃料を提示した人が、一番良い借主とは限らない」
とも感じます。
事業内容。
利用方法。
建物との相性。
財務状況。
契約条件。
保証。
管理のしやすさ。
近隣への影響。
長く継続できる可能性。
こうしたものまで含めて考える必要があります。
例えば、高い賃料を提示してくれる借主であっても、
建物に大きな負荷がかかる。
近隣とトラブルになる可能性が高い。
短期間で撤退する可能性が高い。
大規模な改装を予定している。
ということであれば、慎重に考える必要があります。
反対に、賃料は多少低くても、
建物を大切に使う。
安定した事業を行う。
契約条件を守る。
相談や報告がきちんとできる。
長期間利用してくれる。
そうした借主であれば、貸主にとって非常に良い関係になることがあります。
賃貸経営は、
「今月いくら入るか」
だけではありません。
長期間の関係で考えるものだと思っています。
11.借主を選ぶことも、貸主を選ぶことも大切です
貸主が借主を選ぶ。
これは当然です。
しかし、借主も貸主を選ぶべきだと思っています。
必要な修繕を全く行わない貸主。
連絡しても対応しない貸主。
建物の状態を説明しない貸主。
契約後に突然条件を変える貸主。
このような貸主では、借主も安心して事業を続けられません。
反対に、
必要な連絡をしない借主。
事前相談なく建物を変更する借主。
契約で決めた使い方を守らない借主。
自分たちに必要なことを何でも貸主側の責任だと考える借主。
こうした借主との関係も長続きしません。
だからこそ、
「貸すか、借りるか」
を決める前に、相手を見ることも重要です。
賃貸借は、土地や建物だけを見て成立する取引ではありません。
そこには必ず人がいます。
事業用であれば会社があります。
双方が、
「この相手と長く付き合えるか」
ということも考えた方がよいと思います。
12.事業用賃貸では、「使えるか」だけでなく「適しているか」を考える
事業用不動産では、
「この建物で営業できるか」
という話になりがちです。
しかし、
「使える」
ことと、
「その事業に適している」
ことは同じではありません。
かなり手を入れれば使える。
設備を増やせば使える。
大きな工事をすれば使える。
法的な手続きをすれば使える。
それでも、
「そこまでして、この建物を借りる必要があるのか」
という判断があります。
これは借主自身が考えることです。
同じように貸主側も、
「借りたいと言っているから貸す」
だけではなく、
「この使い方をしても建物に問題がないか」
「周囲への影響はないか」
「将来、別の利用が難しくならないか」
を考える必要があります。
不動産は一つとして同じものがありません。
そして、事業も一つとして同じではありません。
だから、
「この物件で営業できる」
だけで進むのではなく、
「この不動産と、この事業は本当に相性が良いのか」
まで考える。
ここも、事業用賃貸の面白さであり難しさだと思います。
13.貸主として経験したからこそ見えることもあります
私たちは不動産会社です。
長い間、貸主と借主の間に入り、契約をお手伝いしてきました。
しかし、自分たち自身が貸主になることで、改めて見えるものもあります。
仲介の立場であれば、
募集する。
内覧する。
条件を調整する。
契約する。
引き渡す。
というところが一つの仕事になります。
しかし貸主は、その後も建物を所有し続けます。
税金を支払う。
建物を維持する。
修繕する。
保険を掛ける。
借主から相談を受ける。
そしていつか退去があれば、また次を考える。
その意味では、
契約はゴールではありません。
ただし、
「本当に難しいのは契約した後」
ということでもないと思っています。
契約後に問題を抱えないために、契約する前にできるだけ考えておく。
私たちは、むしろこちらの方が重要だと考えるようになりました。
入口を丁寧にする。
現地を見る。
相手の話を聞く。
条件を整理する。
不明な点を残さない。
負担区分を決める。
書面にする。
そこで納得できなければ、無理に契約しない。
これは売買でも賃貸でも、私たちが大切にしている考え方です。
14.「契約してから相談」ではなく「契約する前に相談」
私たちは、
「何かあったら、その都度相談しましょう」
という言葉自体が悪いとは思いません。
長い契約ですから、当然、予想できないことは起こります。
しかし、
契約前から分かっていること。
現地を見れば分かること。
事前に質問すれば分かること。
見積りを取れば分かること。
行政へ確認すれば分かること。
こうしたものまで、
「後で相談しましょう」
としてしまうのは避けたいと思っています。
例えば、事業を始めるために必要な設備があるなら、契約前に確認する。
工事が必要なら、できるだけ契約前に概算を把握する。
借主が改装したいなら、その内容を契約前に話す。
貸主が修繕するなら、どこまで行うのかを決める。
保険が必要なら、加入条件を確認する。
原状回復も考える。
そして、それを契約条件に反映する。
それでも合わなければ、
「今回は契約しない」
という判断があってもよいと思います。
契約を成立させること自体を目的にしない。
双方にとって無理のない条件で成立することの方が重要です。
15.私たちが考える、良い賃貸借
私たちは、
貸主の言うことを何でも聞く借主が、良い借主だとは思いません。
同じように、
借主の要望を何でも受け入れる貸主が、良い貸主だとも思いません。
良い賃貸借とは、
お互いに自分の役割を理解している関係だと思います。
貸主は、貸主として建物に責任を持つ。
借主は、借主として使用方法と事業に責任を持つ。
分からないことは事前に確認する。
必要なことは相手へ伝える。
約束したことは守る。
変更したいことがあれば相談する。
そして、大切なことは書面にする。
それぞれが自分の立場だけを主張するのではなく、
「相手はどう考えるだろう」
ということを少し考える。
その積み重ねが良い関係につながると思っています。
16.不動産は「契約すること」より「続けられること」
私たちは不動産の仕事を長く続けています。
その中で感じるのは、
不動産取引は、その瞬間だけを見てはいけないということです。
売買であれば、
購入した後どうするのか。
将来売れるのか。
賃貸であれば、
契約した後、長く続けられるのか。
どちらも入口だけではなく、その先があります。
特に賃貸借は、貸主と借主の関係が長く続きます。
5年。
10年。
20年。
場合によっては、それ以上になることもあります。
だからこそ私たちは、
「とりあえず契約しましょう」
とは考えたくありません。
現地を確認する。
使い方を確認する。
整備する範囲を確認する。
修繕の考え方を確認する。
設備を確認する。
保険を確認する。
保証を確認する。
改装を確認する。
退去時を確認する。
それでも双方が、
「この条件なら続けられる」
と思えたときに契約する。
賃貸借は、契約書へ印鑑を押した瞬間だけの取引ではありません。
その後の長い関係まで考えたうえで条件を作る。
私たちは、それが大切だと考えています。
17.経験を次の契約に生かす
不動産の仕事を長く続けていても、
「こういうことも起こるのか」
と感じることがあります。
すべての問題を最初から予想することはできません。
しかし、一度経験したことは、次の契約に生かすことができます。
この設備については、最初に確認しておこう。
この修繕については、負担区分を書いておこう。
この使い方については、もう少し詳しく聞いておこう。
借主には、契約前に必ず現地を確認してもらおう。
貸主側でも、引渡しまでに整備する範囲を明確にしておこう。
保険についても確認しよう。
退去時の扱いも書いておこう。
一つ一つの経験が、次の契約条件を少しずつ良くしていきます。
私たちは、それが不動産会社の仕事の一つでもあると思っています。
契約件数が多いことだけが経験ではありません。
問題が起きたとき、
「相手が悪かった」
で終わらせず、
「契約前に何を確認しておけば防げたのだろう」
と考える。
この積み重ねが、不動産会社としての知識になると思います。
18.賃貸は、知れば知るほど奥が深い
賃貸借は一見すると、とても単純です。
貸主が不動産を貸す。
借主が賃料を支払う。
しかし実際には、
建物。
設備。
修繕。
保険。
保証。
使用方法。
改装。
原状回復。
法令。
近隣関係。
事業。
人間関係。
さまざまなものが関係します。
そして一つとして同じ契約はありません。
同じ建物でも、借主が変われば条件が変わります。
同じ借主でも、借りる建物が変われば必要な設備は変わります。
だからこそ、
「前回こうだったから、今回も同じ」
とは限りません。
その都度、現地を見る。
その都度、話を聞く。
その都度、条件を整理する。
そして書面にする。
手間のかかる作業です。
しかし、この手間を契約前に惜しまないことが、結果として貸主と借主の双方を守ることにつながると思っています。
私たち自身も、不動産会社として、貸主として、そして不動産へ投資する立場として、さまざまな経験をしています。
経験すればするほど、
「賃貸は簡単ではない」
と感じます。
同時に、
「だから面白い」
とも思います。
土地建物をただ貸すのではなく、
その不動産を誰がどのように使うのか。
貸主と借主がどのような役割を持つのか。
どのような条件なら双方が長く続けられるのか。
それを一件ずつ考える。
そして、契約する前にできるだけ条件を擦り合わせ、双方が理解した内容を書面として残す。
私たちは、そうした丁寧な賃貸借をこれからも大切にしていきたいと思っています。
📩 お問い合わせ:info@yu-haim.jp
湯 田 圭 一(ゆだ・けいいち)
(有)ユーハイム 代表取締役。1972年、東京都西東京市生まれ。
宅地建物取引士として約25年にわたり不動産業に従事。
茨城県宅地建物取引業協会 水戸支部 幹事として、地域不動産業界の発展にも注力。
空き家対策、相続不動産、事業用地のマッチングなど、実務に即した現場提案に定評がある。