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2026年9月10日
活用したい
【土地を動かす前に考えたいこと】~売却・保有・組み替えと地域の将来~

不動産の仕事を長く続けていると、ときどき自分たち自身に問いかけることがあります。
「この不動産は、本当に今売却することが一番良いのだろうか」
「売却するとすれば、この形でよいのだろうか」
「すべて売却する必要があるのだろうか」
「保有する、貸す、活用するという方法はないのだろうか」
「この不動産を動かした後、所有者の資産全体はどう変わるのだろうか」
そして、
「10年後、30年後、この不動産や地域はどうなっているのだろうか」
そんなことを考えます。
不動産所有者から売却のご相談をいただき、価格を査定し、買主候補を探し、条件を調整して契約につなげる。
これは、不動産会社の大切な仕事です。
売却をご希望であれば、できるだけ良い条件で売却できるようにする。
当然のことです。
しかし、不動産の相談をいただいたとき、最初から答えが「売却」と決まっているとは限りません。
不動産には、
売却する。
保有する。
貸す。
建物を活用する。
一部だけ売却する。
隣接地と一体で考える。
別の不動産へ資産を組み替える。
場合によっては、今は何もしない。
さまざまな選択肢があります。
どれが正しいということでもありません。
所有者によって目的も違います。
不動産によって条件も違います。
地域によって需要も違います。
だからこそ、
不動産を動かす前に、一度いろいろな可能性を並べてみる。
私は、それが大切だと思っています。
今回お伝えしたいのは、
「売却しない方がよい」
という話ではありません。
ある特定の活用方法を勧める話でもありません。
手段は一つではありません。
いくつかの可能性を確認した上で、
「自分たちにとっては、この方法が一番良い」
と納得して選択していただきたい。
そして、そのための判断材料を整理することも、不動産業者の仕事の一つではないか。
そんなことを考えてみたいと思います。
1.まず「なぜ動かしたいのか」を考えてみる
不動産のご相談では、
「この不動産を売却したい」
というところから話が始まることが多くあります。
もちろん、売却したいというご意向は大切です。
ただ、少しお話を聞いてみると、
売却そのものが目的ではないこともあります。
例えば、
管理が大変になった。
固定資産税の負担を減らしたい。
草刈りや建物管理から解放されたい。
相続に備えて整理しておきたい。
事業で使わなくなった。
現金が必要になった。
収益を増やしたい。
資産を整理したい。
子どもたちに負担を残したくない。
こうした理由から、
「売却しよう」
と考えている場合があります。
そうであれば、私たちが最初に確認したいのは、
「いくらで売れるか」
だけではありません。
「何を解決したくて、この不動産を動かそうとしているのか」
ということです。
目的が違えば、方法も変わるからです。
管理が大変なのであれば、売却以外に管理方法を変えることができるかもしれません。
収益を得たいのであれば、売却せず賃貸できる可能性があるかもしれません。
相続が心配なのであれば、その不動産一件だけではなく、所有する資産全体を整理した方がよい場合もあります。
法人であれば、本業の資金が必要なのか、遊休資産を整理したいのかによっても答えは違います。
不動産を動かす前に、
まず人の考えを整理する。
私は、ここがとても重要だと思っています。
2.「今使っていない」と「価値がない」は違います
不動産所有者から、
「ここは今使っていないので、売却を考えています」
というお話をいただくことがあります。
当然の考え方です。
使っていなくても固定資産税はかかります。
土地であれば草刈りや樹木管理が必要です。
建物であれば修繕や保険などの維持費もかかります。
法人であれば、現在の事業に使っていない不動産を保有し続けることについて、経営上の合理性も考えなければなりません。
売却して現金化することが良い場合もあります。
ただし、
「現在使っていない不動産」と「将来も必要のない不動産」は、必ずしも同じではありません。
例えば法人であれば、
現在使っている本社。
倉庫。
駐車場。
資材置場。
以前の事業で利用していた不動産。
現在は空いている不動産。
複数の不動産を所有していることがあります。
一件ずつ見れば、
使っている。
使っていない。
という分類は簡単です。
しかし、会社の5年後、10年後まで考えると、見え方が変わることがあります。
本社を建て替えるかもしれない。
事業を拡大するかもしれない。
逆に拠点を集約するかもしれない。
倉庫を移転するかもしれない。
現在は利用していない不動産が、将来の事業展開に必要になるかもしれません。
個人の場合も同じです。
自宅。
賃貸している土地。
空き家。
相続した不動産。
駐車場。
使っていない土地。
それぞれを一件ずつ処分していくのではなく、
一度全体を眺めてみる。
すると、
「売りやすい不動産」と「今売るべき不動産」が、必ずしも同じではないことがあります。
条件の良い不動産ほど高く売れるかもしれません。
しかし、その条件の良さは、将来の活用可能性でもあります。
だから、
現在使っているかどうかだけではなく、所有資産全体の中で、その不動産がどのような役割を持っているのか。
そこまで考えてみる必要があると思っています。
3.まとまっていること自体が、価値になる不動産があります
不動産の価値を考えるとき、
価格。
面積。
坪単価。
利回り。
こうした数字に目が向きます。
もちろん、どれも重要です。
ただし、不動産には数字だけでは表しにくい価値もあります。
例えば、まとまった土地です。
1,000坪の土地を100坪ずつ10区画に分けても、面積の合計は同じ1,000坪です。
しかし、
「1,000坪のまとまった土地」と、
「100坪の土地が10区画」
は、同じ不動産ではありません。
道路が入ります。
形が変わります。
間口も変わります。
所有者も変わります。
それぞれに建物が建つかもしれません。
抵当権が設定されるかもしれません。
相続も発生します。
一度細分化された不動産を、将来もう一度一つに戻すことは簡単ではありません。
つまり、
不動産を分けるということは、面積を分けるだけではありません。
その不動産が持っていた将来の選択肢の一部を確定させることでもあります。
一方で、まとまった規模だからこそ検討できる利用方法があります。
ある程度の面積が必要な企業。
事業所。
店舗。
医療・福祉施設。
宿泊施設。
集合住宅。
倉庫。
その他の事業用施設。
500坪だからできること。
1,000坪だからできること。
3,000坪だから初めて検討できること。
それぞれ違います。
もちろん、
「広いまま残した方がよい」
という単純な話ではありません。
大きすぎれば総額が高くなり、購入できる人は限られます。
細分化した方が市場性が高くなることもあります。
住宅地として整備することが地域に合っている場合もあります。
だからこそ、
分けることで得られる価値と、まとまっていることで残る価値の両方を見てから考える。
それが大切だと思っています。
4.不動産には、それぞれ違う特性があります
不動産は、一つ一つ違います。
駅に近い。
幹線道路に面している。
高速道路のインターチェンジに近い。
住宅地の中にある。
工業地域にある。
学校の近くにある。
病院の近くにある。
市街化区域なのか。
市街化調整区域なのか。
道路の幅員はどうなのか。
間口はどのくらいあるのか。
高低差はあるのか。
排水はどうなのか。
上下水道はどうなのか。
建物は使えるのか。
建築できる用途は何なのか。
同じ面積、同じ価格帯の不動産でも、条件が違えば活かし方は変わります。
だから、
「住宅が建てられるから住宅にする」
「古い建物だから壊す」
「今使っていないから売る」
と最初から決めてしまうのではなく、
まずその不動産の特徴を見る。
私は、そこを大切にしたいと思っています。
例えば、住宅地として利用できる土地であっても、幹線道路沿いなら事業用としての可能性があるかもしれません。
古い建物でも、用途を変えれば活かせるかもしれません。
単独では使いにくい不動産でも、隣接地と一体で考えることで価値が変わることがあります。
反対に、現在は価値があると思っている建物でも、将来の利用を考えれば撤去した方がよいこともあります。
不動産は、
「何ができるか」
を考えるところから始めたい。
私はそう思っています。
5.現在の姿だけを前提にしない
長く所有している不動産ほど、現在の姿を基準に考えがちです。
「ここに自宅があるから、ここは残す」
「会社がここにあるから、この部分は動かさない」
「空いているところだけ売却する」
とても自然な考え方です。
ただし、不動産は長期間残ります。
30年後も今の自宅を使っているでしょうか。
現在の会社建物を30年後も使っているでしょうか。
現在と同じ事業を、同じ規模で続けているでしょうか。
分かりません。
だから私は、まとまった不動産について考えるとき、
一度、
「今ある建物や利用方法を頭の中から外したら、どう見えるだろう」
と考えることがあります。
もし現在の建物がなかったら、
どこから道路を取るのか。
どの部分を残すのか。
どこを売却するのか。
周辺不動産と合わせたらどうなるのか。
一体で利用した方がよいのか。
そう考えてから、現在の建物や利用状況を改めて重ねてみる。
もちろん、すぐに建物を壊すということではありません。
計画をすぐ実行する必要もありません。
一度考えてみるだけです。
現在の状況だけを前提にして不動産を動かすと、将来の選択肢を狭めてしまうことがあります。
6.「売却価格」だけで結論を出さない
不動産の売却では、価格は非常に重要です。
できるだけ良い条件で売却したい。
当然です。
しかし、ある程度資産を所有している方や法人の場合、
最も高い価格で売却することと、
最も良い資産活用が、
必ずしも同じとは限りません。
例えば、1億円で不動産を売却できたとします。
では、その1億円をどうするのでしょうか。
本業へ投資する。
借入金を返済する。
預金として持つ。
別の収益不動産を購入する。
相続に備える。
別の資産へ移す。
さまざまな方法があります。
つまり、
不動産の売却は、資産活用の終わりではなく、次の資産へ移る入口になることもあります。
反対に、売却せず保有し続ける方が良いこともあります。
賃貸できるかもしれません。
一部だけ売却する方法もあります。
複数の管理しにくい不動産を整理し、管理しやすい資産にまとめる方法もあります。
私は、
「売るか、売らないか」
だけで考えないようにしたいと思っています。
売却・保有・賃貸・組み替え。
複数の方法を並べてから判断する。
その方が、納得できる選択につながると思います。
7.「早く売れる」ということも、一つの価値です
ここまで書くと、
「売却を否定しているのではないか」
と思われるかもしれません。
まったく違います。
早く売却することに価値がある場合もあります。
相続の整理を急ぎたい。
資金が必要。
事業上、遊休資産を早く現金化したい。
管理負担をなくしたい。
所有者によって事情は違います。
そのような場合には、売却スピードも重要な判断材料です。
また、一定規模の住宅用地であれば、多くの不動産会社が建売住宅業者さんへ情報を提供することがあります。
購入判断が早く、まとまった不動産を一括して取得していただける場合もあります。
所有者にとって、それが最も良い選択になるケースもあります。
これは、不動産活用における一つの手段です。
ただし、
それだけが手段ではありません。
私は、ここが大切だと思っています。
建売住宅業者さんへ売却する。
事業会社へ売却する。
個人へ売却する。
貸す。
保有する。
一部を動かす。
別の不動産へ組み替える。
場合によっては、しばらく何もしない。
選択肢はいくつもあります。
特定の方法が正しいのではありません。
所有者が、
「いろいろ考えた結果、この方法が一番良い」
と納得できることが大切です。
8.不動産業者の役割は、選択肢を増やすことでもある
私たち不動産業者も、すべてのことが分かるわけではありません。
建物であれば、建築士や建設会社。
境界や測量であれば、土地家屋調査士。
登記であれば、司法書士。
税務であれば、税理士。
資金計画であれば、金融機関。
法令や許認可であれば、行政やそれぞれの専門家。
案件によって必要な専門家は変わります。
不動産業者が何でも知っている必要はないと思います。
ただ、
その不動産について、何を確認しなければならないのか。
誰に意見を聞けばよいのか。
そこを判断することはできます。
そして、それぞれの専門家の意見を整理して、
所有者へ分かりやすく伝える。
建築士からは、
「こういう使い方ができます」
という意見が出るかもしれません。
金融機関からは、
「この計画なら融資を検討できます」
という意見が出るかもしれません。
測量の専門家からは、
「この道路や境界がポイントです」
という話が出るかもしれません。
税理士からは、
「売却するなら、この点を確認した方がよい」
という意見が出るかもしれません。
それらをまとめると、最初には見えていなかった選択肢が出てくることがあります。
私は、不動産業者の役割の一つは、
所有者が納得して判断できるように、選択肢と判断材料を増やすこと
だと思っています。
9.所有している不動産全体を見る
一件の不動産だけを見ていると、判断を誤ることがあります。
特に複数の不動産を所有している法人や個人の場合には、
一度、全体を眺めてみることが大切です。
法人であれば、
本社。
営業所。
倉庫。
駐車場。
資材置場。
従業員住宅。
投資用不動産。
過去の事業で取得した不動産。
長年所有している遊休不動産。
それぞれについて、
現在の事業に必要なのか。
収益を生んでいるのか。
将来必要になる可能性があるのか。
管理負担はどの程度なのか。
売却候補なのか。
組み替えた方がよいのか。
という整理ができます。
個人の場合にも、
自宅。
貸している不動産。
相続した不動産。
空き家。
駐車場。
使っていない土地。
それぞれの役割を考える。
一つの不動産を高く売ることだけではなく、
資産全体をどういう形にしていきたいのか。
そこまで考えると、選択が変わることがあります。
10.不動産を動かすことは、地域にも残ります
不動産は、その不動産だけで価値が決まるわけではありません。
周辺道路。
近隣の建物。
街並み。
公共交通。
学校。
商業施設。
人口。
周辺の土地利用。
さまざまなものから影響を受けています。
そして反対に、一つの不動産の使い方も地域へ影響します。
空き地に住宅が建つ。
新しい家族が住む。
店舗ができる。
事業所ができる。
古い建物が再利用される。
地域の姿が変わります。
どの使い方が正しいということではありません。
住宅が必要な地域もあります。
事業用地が必要な地域もあります。
建物を壊した方がよいこともあります。
残して活用した方がよいこともあります。
ただ、
不動産を一度動かせば、その結果は地域に長く残ります。
私たち不動産業者が関わった不動産の前を、10年後、20年後に通ることもあります。
そのとき、
「あの不動産はこうなったんだな」
と思います。
一件の取引だけで地域の将来が決まるわけではありません。
しかし、一件一件の積み重ねが街をつくります。
だからこそ、
取引が成立した瞬間だけではなく、
その少し先まで考えてみたい。
私はそう思っています。
11.不動産業者同士でも、考え方は違ってよいと思います
不動産会社によって、得意分野は違います。
住宅売買が得意な会社。
収益不動産が得意な会社。
事業用不動産が得意な会社。
賃貸管理を中心にしている会社。
開発が得意な会社。
それぞれ違います。
だから、
どの会社のやり方が正しい、
間違っている、
という話ではありません。
建売住宅業者さんへ情報を提供し、売却につなげることも、不動産業務の一つです。
事業用として可能性を探す会社もある。
賃貸を提案する会社もある。
所有者自身で活用する方法を考える会社もある。
不動産会社によって提案は違って当然です。
だからこそ、所有者の方にも、
「一つの方法しかない」と思わないでいただきたい
と思っています。
売却の査定を依頼したからといって、必ず売らなければならないわけではありません。
一社から一つの提案を受けたからといって、それが唯一の答えでもありません。
いろいろな意見を聞いてもよいと思います。
その中で、
「自分たちはこうしたい」
という答えを見つけていただく。
それが一番大切です。
12.私たちが大切にしたいこと
私たち(有)ユーハイムも、不動産についてすべての答えを持っているわけではありません。
だからこそ、まず不動産をよく見る。
その不動産が持っている特徴を整理する。
できること。
できないこと。
可能性。
注意点。
周辺との関係。
将来の使い方。
一つずつ確認します。
そして必要であれば、私たちの周りにいる専門家にも意見を聞きます。
私は、
不動産の持つ特性を引き出すこと。
それぞれの不動産が活用できる可能性を少しでも高めること。
信頼できる専門家の意見や見解をまとめること。
こうしたことを大切にしたいと思っています。
その結果、
売却することが一番良いのであれば売却する。
貸した方がよいのであれば貸す。
保有した方がよいのであれば保有する。
別の不動産へ組み替えた方がよいのであれば、それを検討する。
今は動かさない方がよいのであれば、それも一つの判断です。
大切なのは、
私たちが答えを押し付けることではありません。
所有者自身が、いくつかの可能性を理解した上で、納得して選択できること。
そのためのお手伝いをしたいと思っています。
13.納得できる選択をしてください
不動産には、同じものがありません。
所有者の事情も、一人ひとり違います。
だから、
「これが正解です」
と簡単に決められるものではありません。
早く売却することが良い場合もあります。
時間をかけて活用方法を考えた方がよい場合もあります。
売却する。
保有する。
賃貸する。
一部だけ動かす。
資産を組み替える。
しばらく様子を見る。
手段は一つではありません。
私は、不動産を動かす前に、
一度だけ、ほかの可能性も考えてみていただきたい
と思っています。
その不動産だけではなく、所有している資産全体を見る。
現在だけではなく、10年後、30年後も少し考えてみる。
価格だけではなく、利用価値を見る。
売却だけではなく、保有や賃貸、組み替えも考える。
必要なら、専門家にも意見を聞く。
そして最後は、
自分たちが納得できる方法を選ぶ。
それでよいのだと思います。
私たち不動産業者の役割は、
所有者に代わって答えを決めることではありません。
その不動産の可能性を整理し、選択肢を示し、
所有者が納得して判断できるようにすること。
私は、そんな仕事をしていきたいと思っています。
不動産を動かす前に、一度考える。
売る前に考える。
貸す前に考える。
分ける前に考える。
建てる前に考える。
そして、
「ほかに方法はないだろうか」
と、一度だけ考えてみる。
そこから、その不動産にとっての答えが見えてくることがあります。
(有)ユーハイムは、
単に不動産を売るためだけではなく、
その不動産が持っている可能性を一緒に考え、所有者が納得できる選択をするための相談相手でありたい
と思っています。
📩 お問い合わせ:info@yu-haim.jp
湯 田 圭 一(ゆだ・けいいち)
(有)ユーハイム 代表取締役。1972年、東京都西東京市生まれ。
宅地建物取引士として約25年にわたり不動産業に従事。
茨城県宅地建物取引業協会 水戸支部 幹事として、地域不動産業界の発展にも注力。
空き家対策、相続不動産、事業用地のマッチングなど、実務に即した現場提案に定評がある。