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2026年7月22日

活用したい

【その不動産、持ち続ける理由はありますか?】~法人・地主・資産家のための保有不動産見直しの考え方~

 【その不動産、持ち続ける理由はありますか?】~法人・地主・資産家のための保有不動産見直しの考え方~

1.その不動産は、今も役割を果たしていますか

まず最初に確認したいのは、その不動産を今も保有している理由です。

法人であれば、以前は工場、倉庫、営業所、社宅、資材置場などとして必要だった不動産が、事業内容の変化や拠点の統廃合によって使われなくなっていることがあります。

地主様や資産家の方でも、以前は家族が利用していた土地や建物、先代から引き継いだ不動産、将来何かに使うつもりで残してきた土地が、現在は明確な役割を持たないまま保有されていることがあります。

ここで大切なのは、

「昔必要だったから、今も必要」

と考え続けないことです。

不動産は、保有しているだけで価値があるように見えますが、実際にはその役割を定期的に見直すことが必要です。

例えば、

・現在も本業や事業運営に使っているのか
・賃貸などによって収益を生んでいるのか
・将来使う具体的な計画があるのか
・周辺環境や市場性を踏まえて、今後も保有する意味があるのか
・相続や承継のために残す必要があるのか
・管理や維持にかかる負担に見合っているのか

といった点を、一度整理してみる必要があります。

特に法人の場合、過去の事業に必要だった不動産が、そのまま貸借対照表上に残っていることがあります。

しかし、現在の事業に使っておらず、収益も生んでいないのであれば、

「持っていることに意味がある資産なのか」

それとも、

「役割を終えた資産なのか」

を見直す余地があります。

地主様や資産家の方についても同様です。

「先代から受け継いだから」

「何となく売るのはもったいないから」

「将来値上がりするかもしれないから」

という理由だけで保有を続けている場合、その不動産が今の資産全体の中でどのような位置付けにあるのかを確認しておくことが大切です。

もちろん、すぐに売却すべきという話ではありません。

現在は使っていなくても、将来性の高い立地である場合や、隣接地との一体利用に価値がある場合、相続や事業承継の中で残しておく意味がある場合もあります。

重要なのは、

「持っているから残す」

のではなく、

「残す理由があるから持ち続ける」

という状態にしておくことです。

複数の不動産を保有されている場合には、それぞれに役割を持たせて整理する方法もあります。

例えば、

・本業で使用する不動産
・収益を生む不動産
・将来の売却候補
・次世代へ承継する不動産
・今後の活用方法を検討する不動産

というように分類してみると、保有資産全体が見えやすくなります。

不動産は、取得した時点の目的が、その後ずっと変わらないとは限りません。

事業内容も変わります。

家族構成も変わります。

相続や承継の考え方も変わります。

周辺環境や不動産市場も変わっていきます。

だからこそ、一定期間ごとに、

「今、この不動産は何のために持っているのか」

を確認することが大切です。

保有していることそのものを前提にするのではなく、その不動産が今も役割を果たしているのかを確認する。

保有不動産を見直す第一歩は、そこから始まります。

2.保有しているだけで、いくらかかっていますか

不動産は、何もしていなくても費用がかかります。

特に、法人や地主様、複数の不動産を保有されている方の場合、一つひとつの支出はそれほど大きく見えなくても、物件数が増え、保有期間が長くなるほど、全体では相当な負担になることがあります。

代表的なものとして、

・固定資産税
・都市計画税
・火災保険等
・草刈り
・樹木管理
・建物修繕
・設備点検
・警備
・清掃
・借入金利
・管理会社への費用

などがあります。

さらに、建物を保有している場合には、屋根や外壁、防水、給排水設備、空調設備、電気設備など、一定期間ごとにまとまった修繕が必要になることもあります。

老朽化が進んだ建物であれば、

「今年は何もかからなかった」

としても、

翌年に突然、数百万円単位の修繕が必要になる可能性もあります。

つまり、不動産の保有コストは、毎年一定ではありません。

見えやすい費用だけが、保有コストではありません

固定資産税や管理費などは、毎年支払うため比較的把握しやすい費用です。

一方で、見落とされやすい負担もあります。

例えば、

・草刈りや樹木の越境への対応
・近隣からの苦情対応
・空き建物の見回り
・不法投棄への対応
・台風や大雨後の確認
・境界や越境物に関する対応
・老朽建物の安全管理

などです。

これらは、会計上の支出だけではなく、所有者様や担当者の「時間」も使います。

法人であれば、社員や役員が本来の業務とは別に、遊休不動産の管理や近隣対応に時間を取られている場合もあります。

地主様や資産家の方でも、複数の土地を所有していると、

「今年はここの草刈り」

「次はこの建物の修繕」

「今度は隣地から連絡が来た」

というように、管理そのものが負担になっていくことがあります。

金額として見えない管理の手間も、不動産を保有するコストの一つです。

1年間ではなく、5年・10年で考えてみる

一つひとつの費用を見ると、

「それほど大きな負担ではない」

と感じるかもしれません。

しかし、不動産は長期間保有する資産です。

例えば、年間50万円の固定資産税や管理費がかかる不動産であれば、

10年間で500万円です。

そこに途中で300万円の修繕が発生すれば、合計800万円になります。

年間100万円の費用がかかる不動産であれば、10年間では単純計算でも1,000万円です。

だからこそ、

「今、年間いくらかかっているのか」

だけではなく、

「このまま5年、10年持ち続けた場合、どの程度の資金を使うことになるのか」

という見方が重要になります。

複数の不動産を保有している場合は、合計すると見え方が変わります

例えば、5つの不動産を所有していて、それぞれ年間30万円程度の維持費がかかっているとします。

一つだけを見れば、年間30万円です。

しかし、5物件では年間150万円。

10年間では1,500万円になります。

さらに、大規模修繕や解体、造成などが必要になれば、それ以上の資金が必要になります。

比較的多くの不動産を保有されている方ほど、

「この物件はいくらかかっているか」

だけではなく、

「保有不動産全体で、年間いくら使っているか」

を一度集計してみることをおすすめします。

意外に大きな金額になっていることがあります。

借入がある不動産は、金利も含めて考える

借入によって取得した不動産であれば、借入金利も重要な保有コストです。

収益を生んでいる不動産であれば、賃料収入の中から返済や金利を負担できます。

しかし、現在利用していない土地や建物で借入だけが残っている場合には、毎月資金が流出します。

法人であれば、

「この不動産を保有し続けるために借入金を残しておくこと」

と、

「売却して借入金を減らすこと」

のどちらが本業にとって合理的なのか、という比較も必要になります。

金利の負担だけではなく、借入枠を使用していること自体が、今後の事業投資に影響することもあります。

将来必要になる大きな費用も考えておく

建物を所有している場合には、現在の維持費だけではなく、

「今後どのような費用が必要になるか」

も考えておく必要があります。

例えば、

・屋根や外壁の修繕
・防水工事
・給排水設備の更新
・空調設備の更新
・消防設備への対応
・耐震や安全面への対応
・最終的な解体費用

などです。

今は年間の維持費が少ない建物でも、5年後、10年後に大きな修繕が必要になる可能性があります。

そのため、

「現在いくらかかっているか」

だけではなく、

「今後いくらかかりそうか」

まで含めて保有判断をする必要があります。

「売ればいくら」だけではなく「持ち続ければいくら」を比較する

不動産について相談すると、

「今売ったらいくらになりますか」

という質問は非常に多くあります。

もちろん、それは重要な情報です。

ただ、保有を続けるかどうかを判断するのであれば、

「売ればいくらになるのか」

と同時に、

「このまま持ち続けた場合、今後いくら支出するのか」

も比較する必要があります。

例えば、

今売却すれば5,000万円。

10年間保有すれば1,000万円の維持費が予想される。

それでも将来的に6,000万円、7,000万円になる可能性が高いのであれば、保有を続ける意味があるかもしれません。

反対に、将来的な価格上昇が期待しにくく、収益も生まず、毎年費用だけがかかるのであれば、保有を続ける理由を見直す必要があるかもしれません。

重要なのは、

「費用がかかるから売る」

という単純な話ではありません。

その費用を負担してでも持ち続ける価値があるのか。

そこを判断することです。

保有コストを一覧にすると、資産の見え方が変わります

複数の不動産を保有されている法人、地主様、資産家の方には、物件ごとに年間の収支を並べてみることをおすすめします。

例えば、

・年間収入
・固定資産税等
・保険料
・管理費
・修繕費
・借入金利
・その他の維持費
・今後予想される大規模修繕

などを整理します。

そうすると、

「利益を生んでいる不動産」

「ほとんど費用がかからない不動産」

「将来性を期待して保有している不動産」

「毎年資金だけが流出している不動産」

が見えてきます。

すべての不動産を同じ基準で判断する必要はありません。

費用がかかっていても、将来性や利用価値が高ければ保有する意味があります。

逆に、市場価値が高く見える不動産でも、収益を生まず、今後大きな修繕や管理負担が予想されるのであれば、売却や活用方法を検討する余地があります。

「持っているから資産」ではなく、

「どのくらいの費用をかけて、何のために持っている資産なのか」

を把握する。

その数字を確認するだけでも、保有不動産の見え方は大きく変わってくると思います。

 

3.収益を生んでいる不動産と、資金を奪っている不動産を分ける

不動産を多く保有していると、すべてが同じように「資産」に見えてしまいがちです。

しかし実際には、

・毎月安定して収益を生む不動産
・収支がほぼ均衡している不動産
・税金や維持費ばかりかかっている不動産

が混在していることがあります。

特に法人や地主様、資産家の方の場合、不動産の数が増えるほど、一つひとつの収支が見えにくくなることがあります。

昔から保有している土地。

先代から引き継いだ建物。

以前は事業で使っていた不動産。

現在も賃貸している収益物件。

これらをすべて同じ「保有資産」としてまとめてしまうと、本当に利益を生んでいる不動産と、実際には資金を使い続けている不動産の違いが分かりにくくなります。

大切なのは、

「所有している=資産価値がある」

と考えないことです。

もちろん、所有している以上、一定の資産価値はあります。

ただし、

「資産として価値があること」

と、

「持ち続けることが合理的であること」

は別の問題です。

表面上の収入だけでは判断できません

例えば、年間100万円の賃料収入がある不動産があったとします。

一見すると、

「毎年100万円を生んでいる資産」

に見えます。

しかし、そこから、

・固定資産税
・管理費
・保険料
・修繕費
・設備交換費
・入退去に伴う費用
・空室期間
・借入金利

などを差し引くと、実際にはほとんど利益が残っていないこともあります。

さらに、今後数年以内に大規模修繕が必要なのであれば、現在の収益だけを見て「良い資産」と判断することはできません。

反対に、現在は大きな収益を生んでいなくても、立地や将来性に優れ、今後の活用余地が大きい土地であれば、長期保有する意味がある場合もあります。

つまり、

「今いくら収入があるか」

だけではなく、

「この資産を持ち続けた場合、将来的にどのような収益や価値が期待できるか」

まで見る必要があります。

利回りだけでも判断できません

不動産を見るとき、利回りは重要な指標です。

ただし、利回りだけで保有するか売却するかを決めることも危険です。

例えば、利回りが高くても、

・建物の老朽化が進んでいる
・空室リスクが高い
・今後大規模修繕が必要
・周辺人口が減少している
・特定の一社だけに賃貸している

のであれば、将来の収益が安定するとは限りません。

反対に、現在の利回りは低くても、

・立地が良い
・土地としての価値が高い
・用途変更の可能性がある
・将来の再開発や周辺整備が期待できる
・別用途への転換がしやすい

といった不動産であれば、保有を続ける意味があります。

重要なのは、現在の収益性と将来の資産価値を分けて考えることです。

「資金を生む不動産」と「資金を使う不動産」を見える化する

複数の不動産を保有している場合には、物件ごとに収支を整理してみると分かりやすくなります。

例えば、

・年間賃料収入
・年間維持費
・固定資産税
・管理費
・修繕費
・借入金利
・将来予想される大規模修繕
・現在の市場価値

などを一覧にします。

そうすると、

「毎年安定して利益を生んでいる不動産」

「収益は少ないが、将来性がある不動産」

「収支がほぼゼロの不動産」

「毎年資金を持ち出している不動産」

が見えてきます。

この整理をすると、同じ「不動産」という資産でも、性格がまったく違うことが分かります。

法人の場合は、本業との関係も重要です

法人が所有する不動産については、単純な賃料収入だけで判断できない場合があります。

例えば、自社工場や営業所であれば、直接賃料収入を生んでいなくても、本業に必要な資産です。

社員寮や駐車場についても、事業運営上必要であれば保有する意味があります。

一方で、

・以前使っていた工場
・統廃合後の営業所
・現在使っていない社宅
・将来利用予定のない遊休地

などについては、本業との関係が薄くなっている可能性があります。

そのような不動産が毎年税金や管理費だけを発生させているのであれば、

「この不動産を保有することが、会社全体にどのような価値をもたらしているのか」

を改めて確認する必要があります。

売却して得た資金を本業へ投資した方が、会社全体として高い収益を生む可能性もあります。

地主様や資産家の方は、資産全体の中で比較する

地主様や資産家の方の場合も、一つの不動産だけで判断する必要はありません。

例えば、

A物件は高収益。

B物件は収支がほぼゼロ。

C物件は毎年維持費だけがかかる。

D物件は現在収益を生んでいないものの、将来性が高い。

という場合、それぞれ違う方針でよいはずです。

すべてを売る必要もありません。

すべてを保有し続ける必要もありません。

収益を生んでいる不動産は残す。

将来性がある不動産は長期保有する。

活用余地がある不動産は改善を検討する。

役割を終え、資金を使い続けている不動産は売却を検討する。

こうした整理ができます。

売却代金まで含めて考えると、見方が変わります

もう一つ重要なのが、

「今売ったら、いくらの資金になるのか」

という視点です。

例えば、毎年50万円の利益を生んでいる不動産があったとしても、今売却すれば5,000万円になるのであれば、

「年間50万円の利益を得るために、5,000万円の資産を持ち続けることが合理的なのか」

という比較ができます。

もちろん、将来値上がりする可能性や、安定した収益を生む価値もありますので、単純計算だけで結論を出すことはできません。

ただ、

「売却した場合に得られる資金」

と、

「保有を続けた場合に得られる収益」

を比較することで、その不動産の位置付けが見えやすくなります。

法人であれば、その5,000万円を本業へ投入した場合の収益性と比較できます。

資産家の方であれば、別の不動産や金融資産への組み替えと比較できます。

つまり、保有不動産には、

「持っていることで得られる利益」

だけでなく、

「売却しないことで他の投資機会を使わない」

という側面もあります。

「資金を奪う不動産=すぐ売却」ではありません

ここは誤解のないようにしておきたいところです。

現在、支出の方が多い不動産だからといって、すぐに売却すべきとは限りません。

例えば、

・将来利用する具体的な計画がある
・周辺環境の変化によって価値上昇が期待できる
・隣接地と一体で保有する意味がある
・相続や事業承継上、残す理由がある

のであれば、費用を負担してでも保有する合理性があります。

重要なのは、

「なぜ資金を使ってまで、この不動産を持ち続けるのか」

について、明確な理由があることです。

理由が明確であれば、それは必要なコストです。

一方で、特に理由がなく、毎年支出だけが続いているのであれば、一度見直す必要があります。

不動産ごとの役割を明確にする

最終的には、保有不動産を、

「資金を生む資産」

「将来の価値を期待して保有する資産」

「本業や生活に必要な資産」

「活用方法を見直す資産」

「資金を使い続けているため整理を検討する資産」

というように分けて考えると分かりやすくなります。

大切なのは、

「不動産を何件持っているか」

ではありません。

その一つひとつが、

「何のために存在し、どのような役割を果たしているのか」

を把握することです。

特に法人、地主様、資産家の方のように複数の不動産を保有されている場合には、すべてを同じように「資産」と見るのではなく、

「資金を生む不動産」

「資金を使い続ける不動産」

を一度分けてみる。

それだけでも、保有資産全体の姿がかなり明確になってくると思います。

 

4.「いつか使うかもしれない」を、そのままにしていませんか

不動産を手放さない理由として非常に多いのが、

「いつか使うかもしれない」

という考えです。

もちろん、具体的な利用計画があるのであれば、保有を続けることに十分な意味があります。

法人であれば、将来の事業拡張、倉庫や営業所としての利用、新規事業の拠点など、明確な計画がある場合があります。

地主様や資産家の方であれば、子どもや孫が将来使う予定がある、隣接地との一体利用を考えている、将来の相続や承継を見据えて残している、というケースもあります。

問題なのは、

「いつか」

が何年経っても具体化しないまま、保有だけが続いている場合です。

例えば、

「子どもが使うかもしれない」

「会社で何かに使うかもしれない」

「将来値上がりするかもしれない」

「何となく売るのはもったいない」

という状態のまま、10年、20年と経過している不動産もあります。

その間にも、固定資産税や管理費、草刈り、建物修繕、保険料などの費用は発生します。

建物があれば老朽化も進みます。

周辺環境や需要が変わり、以前は使いやすかった不動産が、将来も同じように価値を保てるとは限りません。

「いつか」を具体的な計画に置き換える

保有を続けるのであれば、「いつか」という言葉を、もう少し具体的にしてみることが大切です。

例えば、

・誰が使うのか
・何に使うのか
・いつ頃使うのか
・そのためにどの程度の費用が必要なのか
・それまで何年間保有するのか
・その間の維持管理費はいくらか
・利用計画が実現しなかった場合はどうするのか

といった点です。

法人であれば、

「3年後に倉庫として利用する予定」

「5年以内に新規事業の拠点として使う」

というように、時期と用途がある程度明確であれば、保有を続ける理由があります。

一方で、

「事業が拡大したら使うかもしれない」

という状態が何年も続いているのであれば、本当に将来利用する可能性が高いのかを一度見直してみる必要があります。

地主様や資産家の方の場合も同じです。

「子どもが使うかもしれない」

のであれば、

「子ども本人は本当に利用を希望しているのか」

「どのような用途で使うのか」

「その地域に住む予定があるのか」

まで確認しておくことが大切です。

所有者様が残しておきたいと思っていても、次の世代は利用を考えていないこともあります。

「将来値上がりするかもしれない」も、一つの投資判断です

不動産を保有する理由として、

「将来、もっと高くなるかもしれない」

という考えもあります。

もちろん、将来性の高い地域であれば、長期保有は合理的な選択です。

ただし、

「何となく値上がりしそうだから」

という理由だけで保有を続けるのであれば、

・周辺の地価動向
・人口や世帯数
・道路や交通環境
・商業施設や企業立地
・行政の土地利用方針
・周辺の売買事例

などを確認し、

「保有コストを負担してでも待つ価値があるのか」

を考える必要があります。

将来の値上がりを期待して持ち続けることも、立派な投資判断です。

だからこそ、期待だけではなく、根拠を持って判断した方がよいと思います。

何も決めないことも、一つの判断になっています

不動産の場合、

「売る」

という判断には決断が必要です。

そのため、

「とりあえず持っておこう」

となりやすいのですが、実は何も決めないことも、

「保有を続ける」

という判断を毎年していることになります。

そして、その判断には、

・固定資産税を負担する
・維持管理を続ける
・資金をその不動産に固定する
・他の投資や資産組み替えを行わない

という結果が伴います。

ですから、

「何もしていない」

のではありません。

毎年、保有を継続するという選択をしていることになります。

その選択が合理的であれば問題ありません。

ただ、理由を確認しないまま何年も続けているのであれば、一度立ち止まって整理する価値があります。

法人の場合は、事業計画と切り離して考えない

法人所有の不動産については、

「いつか会社で使う」

という理由で保有されているケースがあります。

しかし、現在の事業内容や今後の経営計画と照らし合わせてみると、実際には利用する可能性が低くなっていることもあります。

例えば、

・事業内容が変わった
・必要な敷地面積が変わった
・物流や働き方が変化した
・拠点を統廃合した
・別の地域へ事業の中心が移った

という状況であれば、取得当時の目的と現在の経営環境は違っています。

法人の場合には、

「昔の事業計画では必要だった」

ではなく、

「今後の事業計画でも必要なのか」

を確認することが重要です。

本業で使わないのであれば、賃貸する、売却する、別用途へ活用するという選択肢も出てきます。

資産家・地主様は「次の世代が本当に欲しいか」まで考える

地主様や資産家の方の場合には、

「子どもに残したい」

という理由で保有を続けることもあります。

ただし、次の世代にとって、

「価値のある資産」

と、

「管理しなければならない不動産」

は同じではありません。

例えば、

遠方にある土地。

草刈りが必要な土地。

老朽化した空き家。

収益性が低い建物。

共有になりやすい土地。

こうした不動産を、

「将来使うかもしれないから」

という理由だけで残した場合、次の世代が同じ判断をするとは限りません。

残すのであれば、

「なぜこの不動産を残すのか」

まで一緒に伝えられる状態にしておくことが大切です。

「売らない理由」と「売る決断をしていない状態」は違います

ここで一度、整理してみたいのが、

「明確な理由があって売らない」

のか、

「売るかどうかを決めていないだけ」

なのかという違いです。

例えば、

「将来の事業拡張に使うため5年間は保有する」

「収益性は低いが、隣接地と一体で将来利用するため残す」

「次世代へ承継することを家族で決めている」

のであれば、保有を続ける明確な理由があります。

一方で、

「何となくもったいない」

「そのうち何かあるかもしれない」

という状態であれば、判断を先送りしているだけかもしれません。

不動産を売却する必要はありません。

残すという選択も、もちろん大切です。

ただし、

「何となく残す」

のではなく、

「この理由があるから残す」

という状態にしておくことが重要です。

「いつか使うかもしれない」という言葉を具体化してみる。

それだけでも、その不動産を本当に持ち続けるべきなのか、それとも別の活かし方を考えるべきなのかが見えやすくなってくると思います。

 

5.相続・承継した後、次の世代が本当に管理できますか

地主様や資産家の方にとって、ここは非常に重要なテーマになります。

不動産を残すことが、そのまま良い相続になるとは限りません。

長年保有してきた土地や建物には、思い入れがあります。

先代から受け継いだ土地であれば、

「できればそのまま残したい」

「子どもや孫にも引き継いでほしい」

と考えるのは自然なことです。

しかし、相続や承継を考えるときには、

「何を残したいか」

だけではなく、

「受け取る側が、本当にその不動産を管理できるのか」

という視点も必要になります。

例えば、

・遠方にある土地
・管理の必要な空き家
・収益性の低いアパート
・草刈りが必要な広い土地
・老朽化した建物
・複数人で共有になりやすい不動産
・境界や接道などに課題がある土地
・売却に時間がかかる大型不動産

などをそのまま次の世代へ引き継ぐと、受け取った側に相当な管理負担が残る場合があります。

「資産を残すこと」と「管理を残すこと」は同じではありません

不動産は、現金とは違います。

相続した後も、

・固定資産税を支払う
・草刈りをする
・建物を修繕する
・近隣対応をする
・賃貸管理をする
・空室対策をする
・将来の売却方法を考える

といった管理が必要になります。

収益性の高い不動産であれば、その管理負担を上回る価値があります。

一方で、収益をほとんど生まない不動産や、維持費ばかりかかる不動産の場合、

「財産を受け取った」

というより、

「管理しなければならないものを引き継いだ」

という状態になることもあります。

所有者様にとって価値のある不動産が、次の世代にとっても同じ価値を持つとは限りません。

ここは、相続を考えるうえで非常に大切なところです。

次の世代は、その場所で暮らし、その不動産を使うのでしょうか

家族構成や働き方は、世代が変われば大きく変わります。

現在の所有者様は地元に住んでいて、土地や建物を日常的に管理できるかもしれません。

しかし、子ども世代は東京や他県に住んでいるかもしれません。

会社員として働いていれば、平日に行政や業者との打ち合わせをすることも難しくなります。

そうなると、

「実家の近くにあるから管理できる」

という現在の前提が、次の世代では成り立たなくなることがあります。

相続を考えるときには、

「子どもに残したい」

だけではなく、

「子どもは本当にこの不動産を必要としているか」

「どこに住み、誰が管理するのか」

「管理を外部へ委託する場合、その費用を負担できるか」

まで考えておくことが大切です。

収益不動産でも、引き継ぎやすさには差があります

賃貸アパートや貸店舗など、収益を生んでいる不動産であれば、必ず安心して承継できるとも限りません。

例えば、

・築年数が進んでいる
・大規模修繕が近い
・空室が増えている
・一社への依存度が高い
・借入金が残っている
・管理会社との関係が複雑

といった不動産では、相続した直後から判断を求められることがあります。

重要なのは、

「賃料収入があるから残す」

ではなく、

「今後も安定して収益を生み、次の世代でも管理しやすい資産なのか」

を見ることです。

収益性だけでなく、

管理のしやすさ、

将来の修繕負担、

売却しやすさまで含めて考えると、相続後の負担が見えやすくなります。

共有になる不動産には、別の難しさがあります

相続によって一つの不動産を複数人で共有する場合には、さらに慎重な整理が必要です。

兄弟姉妹で公平に相続するため、

「土地を3人で3分の1ずつ」

という形になることがあります。

しかし、不動産は現金のように簡単に分けられるものではありません。

将来、

一人は売りたい。

一人は残したい。

一人は貸したい。

という意見の違いが生じれば、その後の意思決定が難しくなることがあります。

さらに世代が進めば、共有者が増える可能性もあります。

そのため、

「平等に分けること」

と、

「管理しやすく承継すること」

は必ずしも同じではありません。

不動産の種類や価値によっては、生前に整理したり、資産の組み替えを行ったりする方が、次の世代にとって分かりやすい場合があります。

法人所有不動産も、事業承継の中で考える

法人の場合も同様です。

創業者や現在の経営者にとっては、

「会社に必要な不動産」

だったとしても、後継者が同じ事業を同じ形で続けるとは限りません。

例えば、

・以前の事業で使っていた工場
・現在利用していない倉庫
・旧営業所
・社宅
・保養施設
・将来利用予定のない土地

などを会社が保有している場合、事業承継後に後継者がその資産の管理まで引き継ぐことになります。

その不動産が今後の事業に必要なのであれば問題ありません。

しかし、本業との関係が薄くなっているのであれば、

「なぜ会社としてこの不動産を持ち続けるのか」

を承継前に整理しておく価値があります。

会社そのものを承継することと、すべての不動産をそのまま承継することは別の問題です。

「何を残すか」より「何なら安心して残せるか」

相続や承継を考えるとき、

「この土地を残したい」

「この建物は売りたくない」

という所有者様の思いは、とても大切です。

一方で、次の世代の立場から見ると、

・安定した収益を生む
・管理が難しくない
・価値が分かりやすい
・将来売却しやすい
・利用方法を選びやすい

といった不動産の方が承継しやすい場合があります。

だからこそ、

「何を残したいか」

だけではなく、

「何なら安心して引き継いでもらえるか」

という視点を加えることが重要です。

生前に整理することで、選択肢を増やせる場合があります

所有者様が元気なうちであれば、

・一部を売却する
・遊休不動産を整理する
・収益性の低い資産を見直す
・複数の土地を整理して分かりやすくする
・別の収益資産へ組み替える
・現金化して分けやすい状態にする

など、さまざまな選択肢を検討できます。

相続が発生してからでは、相続人全員の合意が必要になったり、期限のある手続きが重なったりして、十分な時間をかけて考えにくくなることもあります。

そのため、

「まだ相続は先だから」

ではなく、

「今ならどのような整理ができるか」

という視点で考えておくことには意味があります。

不動産を残すことが目的ではありません

本当に大切なのは、

「不動産そのものを残すこと」

ではなく、

「次の世代へ価値を残すこと」

だと思います。

その価値が、不動産そのものの場合もあります。

安定した収益を生む賃貸不動産かもしれません。

将来性の高い土地かもしれません。

一方で、管理負担が大きく、今後の活用可能性も低い不動産であれば、売却して別の資産へ組み替える方が、次の世代にとって良い形になる場合もあります。

大切なのは、

「先代から受け継いだから、そのまま次へ渡す」

ということではありません。

その不動産が現在どのような状態にあり、

次の世代にとってどのような資産になるのかを一度整理してみることです。

「何を残すか」

と同時に、

「どのような状態で残すか」

「誰が管理するのか」

「受け取った人が困らないか」

まで考える。

それが、地主様、資産家の方、そして事業承継を控える法人にとって、より良い不動産承継を考える第一歩になると思います。

 

6.売却して別の資産へ組み替えるという考え方

不動産を売却することは、

「資産を失うこと」

ではありません。

売却によって得た資金を、別の資産や事業へ移すこともできます。

特に法人、地主様、資産家の方にとっては、

「この不動産を持ち続けるべきか」

だけではなく、

「この資産を、次に何へ変えるべきか」

という視点を持つことで、判断の幅が大きく広がります。

例えば、

・より収益性の高い不動産へ組み替える
・管理負担の少ない不動産へ変える
・借入金を返済する
・法人の本業へ投資する
・金融資産へ分散する
・相続に備えて現金化する

といった方法があります。

重要なのは、売却そのものをゴールにしないことです。

「売った後、その資金をどう使うのか」

まで含めて考えることで、売却の意味が変わります。

資産は「形を変える」ことができます

例えば、収益性の低い土地や、毎年維持費だけがかかっている建物を売却し、その資金を安定した収益不動産へ移すことができれば、資産総額を大きく減らさずに、収益性や管理効率を改善できる場合があります。

地主様や資産家の方であれば、

「土地を持っていること」

そのものを目的にする必要はありません。

収益性の高い不動産へ組み替える。

管理の手間が少ない不動産へ変える。

金融資産へ一部移す。

現金比率を高める。

こうした選択肢もあります。

つまり、資産は、

「不動産のまま持ち続ける」

だけではなく、

「別の形へ変える」

ことができます。

法人であれば、本業への再投資という考え方もあります

法人が遊休不動産を保有している場合、その不動産を売却して得た資金を、

・設備投資
・人材採用
・新規事業
・借入金返済
・事業拡大

などへ振り向けることもできます。

例えば、利用していない土地を数千万円で売却し、その資金を本業へ投入した方が、会社全体として高い収益を生むのであれば、その方が合理的な場合もあります。

不動産として持ち続ける価値と、本業へ資金を回す価値を比較することが重要です。

売却して借入金を減らすことも、立派な資産改善です

売却代金の使い道は、必ずしも新たな投資である必要はありません。

借入金を返済することも、大きな意味があります。

借入金を減らせば、

・金利負担を減らせる
・財務体質を改善できる
・将来の借入余力を確保できる
・経営の自由度を高められる

といった効果があります。

特に法人の場合には、不動産を売却して借入金を圧縮することで、会社全体のバランスシートを改善できることもあります。

地主様や資産家の方でも、収益性の低い不動産を売却し、借入を減らすことで、資産全体の安定性を高められる場合があります。

管理負担を減らすことも、資産価値の改善です

資産の組み替えというと、

「より高い収益を目指す」

というイメージが強いかもしれません。

しかし、管理負担を減らすことも重要です。

例えば、

・遠方にある土地
・草刈りが必要な広い土地
・老朽化した建物
・修繕が頻繁に必要な収益物件
・近隣対応が多い不動産

を売却し、管理のしやすい不動産へ組み替えることで、所有者様の負担を大きく減らせることがあります。

年齢を重ねるほど、

「いくら収益があるか」

だけではなく、

「どれだけ手間なく管理できるか」

も大切な要素になります。

資産家の方ほど、資産額だけでなく、資産管理のしやすさも重要になってきます。

相続を考えるなら、分けやすい資産へ変える考え方もあります

不動産は、現金に比べて分けにくい資産です。

例えば、一つの土地を3人の子どもへ平等に残そうとすると、

共有にするのか。

分筆するのか。

誰か一人が取得して他の相続人へ代償金を支払うのか。

といった問題が生じます。

一方で、不動産の一部を生前に整理し、現金や分けやすい資産へ変えておけば、相続時の選択肢を増やすことができます。

つまり、

「不動産を残す」

ことだけが資産承継ではありません。

「次の世代が扱いやすい形へ変えて残す」

という考え方もあります。

組み替えでは、税金や諸費用も含めて考える

もちろん、不動産を売却して別の資産へ組み替える場合には、売却代金がそのまま次の投資へ使えるわけではありません。

・譲渡所得に関する税金
・仲介手数料
・測量費
・登記費用
・その他の諸経費

などが発生する場合があります。

また、新たな不動産を購入すれば、取得時の費用も必要になります。

そのため、

「売却価格はいくらか」

だけではなく、

「最終的にいくら使える資金が残るのか」

を確認してから組み替えを考える必要があります。

税務面については、税理士などの専門家と確認しながら進めることが大切です。

「売るか、残すか」ではなく「次に何へ変えるか」

複数の不動産を保有されている方ほど、

「この不動産を売るべきか」

という問いだけでは判断しにくいものです。

そこで、

「この資産を次に何へ変えるべきか」

と考えてみます。

売却して現金にする。

別の不動産へ組み替える。

借入を返済する。

本業へ投資する。

次世代が管理しやすい資産へ変える。

こうして考えると、売却は「終わり」ではなく、資産を再配置するための一つの手段になります。

収益性の低い不動産を整理し、その資金をより有効に使える場所へ移す。

それによって、資産総額を大きく減らさずに、収益性、管理性、資金効率を改善できる場合があります。

法人、地主様、資産家の方にとって重要なのは、

「不動産を何件持っているか」

ではなく、

「保有している資産が、全体としてどれだけ有効に働いているか」

という視点だと思います。

7.「残す・活かす・売る」を保有不動産ごとに整理する

最後は、実際に保有している不動産を一つずつ整理してみます。

ここまで、

・今も役割を果たしているか
・保有コストはいくらか
・収益を生んでいるか
・将来使う予定があるか
・次世代が管理できるか
・別の資産へ組み替える方がよいか

という視点から考えてきました。

最後は、それらを踏まえて、

「この不動産を今後どうするのか」

を物件ごとに分類します。

例えば、

A 今後も残す不動産
B 収益改善や活用方法を検討する不動産
C 条件が整えば売却する不動産
D 早めに整理を検討する不動産

というように仕分けます。

A 今後も残す不動産

例えば、

・本業で必要な不動産
・安定した収益を生んでいる不動産
・立地や希少性に優れた不動産
・将来利用する具体的な計画がある不動産
・次世代へ承継する明確な理由がある不動産

などです。

こうした不動産については、無理に売却を考える必要はありません。

むしろ、

「どうすれば今後も価値を維持できるか」

を考える方が重要です。

必要な修繕や管理を行い、長期保有を前提に計画していきます。

B 収益改善や活用方法を検討する不動産

現在は十分に活かされていなくても、可能性が残っている不動産があります。

例えば、

・空いている建物
・賃料が相場より低い収益物件
・一部しか使っていない土地
・既存建物に別用途の可能性がある不動産
・分割や一部売却が考えられる土地

などです。

こうした不動産については、すぐに売却するのではなく、

「もう少し価値を引き出せないか」

を考えます。

賃貸条件を見直す。

用途を変える。

一部を貸す。

一部を売る。

既存建物を活用する。

といった方法があります。

C 条件が整えば売却する不動産

今すぐ処分する必要はないものの、

「条件が合えば売却してもよい」

という不動産もあります。

例えば、

・現在は特に利用していない
・維持費はそれほど大きくない
・一定の市場価値がある
・今後の利用予定は明確ではない

といった不動産です。

この場合には、無理に価格を下げて早く売る必要はありません。

「この金額なら売る」

「このような買主なら売る」

「一部だけなら売る」

といった条件を決めて、市場の反応を見る方法もあります。

D 早めに整理を検討する不動産

一方で、

・収益を生んでいない
・毎年維持費がかかる
・今後の利用予定がない
・建物の老朽化が進んでいる
・管理負担が大きい
・次世代も必要としていない
・将来的な価値上昇も期待しにくい

という不動産については、早めに整理を検討する余地があります。

保有期間が長くなるほど、税金や管理費、修繕費が積み重なる可能性があります。

だからといって、慌てて安く売る必要はありません。

重要なのは、

「今後も保有する積極的な理由があるのか」

を確認することです。

判断基準を揃えると、不動産同士を比較しやすくなります

複数の不動産を保有している場合には、すべての物件について同じ項目を並べてみると分かりやすくなります。

例えば、

・現在の利用状況
・年間収入
・年間維持費
・現在の市場価値
・今後必要になる修繕費
・将来性
・管理負担
・本業との関係
・相続や承継のしやすさ
・売却した場合の資金用途

などです。

こうして横並びにすると、

「収益は低いが、将来性が高い」

「市場価値は高いが、本業には不要」

「収益はあるが、大規模修繕が近い」

「収益もなく、将来使う予定もない」

といった違いが見えてきます。

一つの基準だけではなく、複数の要素を組み合わせて判断することが大切です。

「全部売る」「全部残す」という二択にしない

特に不動産を多く保有されている方の場合、

「資産整理=全部売る」

と考える必要はありません。

残すべき不動産は残す。

収益を改善できる不動産は活かす。

条件次第で売却できる不動産は市場に出してみる。

役割を終えた不動産は整理を検討する。

それぞれ違う判断で構いません。

むしろ、保有している不動産すべてに同じ判断をする方が不自然です。

不動産を整理すると、資産全体の姿が見えてきます

例えば10件の不動産を持っていたとしても、

「何となく10件持っている」

状態と、

「5件は長期保有、2件は収益改善、2件は条件次第で売却、1件は早期整理」

と整理されている状態では、資産管理のしやすさがまったく違います。

今後必要となる資金も見えます。

修繕計画も立てやすくなります。

売却候補も明確になります。

相続や承継について家族と話し合う際にも、説明しやすくなります。

法人であれば、経営計画の中で不動産をどのように位置付けるかが分かりやすくなります。

持ち続ける理由がある不動産を残す

今回の記事で最もお伝えしたいのは、

「不動産を減らしましょう」

ということではありません。

大切なのは、

「なぜこの不動産を持っているのか」

を一つずつ明確にすることです。

収益を生むから持つ。

本業に必要だから持つ。

将来性があるから持つ。

次世代へ残す意味があるから持つ。

そうした明確な理由がある不動産は、堂々と残せばよいと思います。

一方で、

「昔から持っているから」

「何となく売るのがもったいないから」

という理由だけで保有を続けている不動産については、一度見直してみる価値があります。

「すべて売る」

「すべて残す」

ではなく、

「残す・活かす・売る」

を不動産ごとに考える。

そうすることで、保有している不動産の数ではなく、

「資産全体がどれだけ有効に働いているか」

という視点で、不動産を管理できるようになります。

法人、地主様、資産家の方にとって、これが保有不動産を見直す一つの基本的な考え方だと思います。

 

7.「残す・活かす・売る」を保有不動産ごとに整理する

最後は、実際に保有している不動産を一つずつ整理してみます。

ここまで、

・今も役割を果たしているのか
・保有しているだけでどのくらい費用がかかっているのか
・収益を生んでいるのか
・将来利用する具体的な予定があるのか
・次の世代が管理できるのか
・別の資産へ組み替える方がよいのか

といった視点から考えてきました。

最後に必要なのは、それらを踏まえて、

「この不動産を今後どう位置付けるのか」

を物件ごとに明確にすることです。

複数の不動産を保有している法人、地主様、資産家の方の場合、すべての不動産を同じ考え方で管理する必要はありません。

むしろ、一つひとつの不動産に役割を持たせる方が、資産全体を把握しやすくなります。

例えば、

A 今後も残す不動産
B 収益改善や活用方法を検討する不動産
C 条件が整えば売却する不動産
D 早めに整理を検討する不動産

というように仕分けてみます。

A 今後も残す不動産

まずは、今後も保有を続ける理由が明確な不動産です。

例えば、

・法人の本業で使用している土地や建物
・安定した収益を生んでいる賃貸不動産
・立地や希少性に優れ、将来性が期待できる土地
・隣接地と一体で保有する意味がある不動産
・将来利用する具体的な計画がある不動産
・次世代へ承継する明確な理由がある不動産

などです。

こうした不動産については、無理に売却を考える必要はありません。

むしろ、

「どうすれば今後も価値を維持できるか」

「将来の修繕や管理をどうするか」

「次の世代へどのような状態で引き継ぐか」

を考えることが重要になります。

残すと決めた不動産については、長期保有を前提とした管理計画を持っておくことが大切です。

B 収益改善や活用方法を検討する不動産

現在は十分に活かされていなくても、まだ可能性が残っている不動産があります。

例えば、

・空いている建物
・賃料が長期間見直されていない収益物件
・一部しか使っていない広い土地
・既存建物を別用途へ転用できる可能性がある不動産
・一部賃貸や一部売却が考えられる土地
・事業内容の変化によって使わなくなった法人所有不動産

などです。

こうした不動産については、

「使っていないから売る」

とすぐに決めるのではなく、

「別の活かし方はないか」

を一度検討する価値があります。

賃貸条件を見直す。

建物の用途を変える。

土地の一部を貸す。

一部を売却する。

既存建物を活用できる事業者を探す。

こうした方法によって、現在は十分に働いていない不動産が、再び収益や価値を生む資産へ変わる可能性があります。

C 条件が整えば売却する不動産

今すぐ売る必要はないものの、

「一定の条件であれば売却してもよい」

という不動産もあります。

例えば、

・現在は特に利用していない
・維持費の負担は大きくない
・一定の市場価値がある
・将来の利用予定が明確ではない
・売却代金を別の用途に使える

といった不動産です。

この場合には、

「すぐに売る」

という判断だけではなく、

「この価格であれば売る」

「このような買主であれば売る」

「一部だけなら売る」

「数年以内に条件が整えば売る」

という考え方もできます。

時間的な余裕があること自体が、売却条件を良くする材料になる場合もあります。

市場の反応を確認しながら、条件に合う買主が現れたときに売却する。

こうした柔軟な位置付けをしておくことも、不動産を多く保有している方だからこそできる方法です。

D 早めに整理を検討する不動産

一方で、保有を続ける積極的な理由が見つけにくい不動産もあります。

例えば、

・現在収益を生んでいない
・毎年税金や管理費だけがかかっている
・今後利用する予定がない
・建物の老朽化が進んでいる
・管理負担が大きい
・遠方にあり管理しにくい
・次の世代も必要としていない
・将来的な活用可能性が低い

といった不動産です。

こうした不動産は、保有期間が長くなるほど、

固定資産税。

草刈り。

修繕。

管理。

建物の老朽化。

といった負担が積み重なる可能性があります。

だからといって、慌てて安く売却する必要はありません。

大切なのは、

「今後も保有する理由があるのか」

を確認し、理由が見つからないのであれば、早い段階から売却や活用方法を検討しておくことです。

同じ基準で並べてみると、違いが見えてきます

複数の不動産を保有している場合には、物件ごとに同じ項目を並べてみると比較しやすくなります。

例えば、

・現在の利用状況
・年間収入
・年間維持費
・現在の市場価値
・将来必要になりそうな修繕費
・立地や将来性
・管理負担
・本業との関係
・相続や承継のしやすさ
・売却のしやすさ
・売却した場合の資金用途

などです。

こうして横並びにすると、

「収益は高いが、大規模修繕が近い」

「収益はないが、将来性が高い」

「市場価値は高いが、本業には必要ない」

「維持費が大きく、将来の利用予定もない」

といった違いが見えてきます。

不動産は一つの指標だけで判断できません。

収益性が低くても、将来性や希少性が高ければ残す意味があります。

一方で、評価額が高くても、活用せず管理負担だけが続いているのであれば、資産全体の中で見直す余地があります。

法人の場合は、不動産を経営資源として見る

法人所有の不動産については、

「不動産だから保有する」

のではなく、

「会社の経営資源として、どのような役割を持っているか」

という視点が重要です。

本業に必要な不動産なのか。

収益を生んでいる不動産なのか。

将来の事業用地なのか。

それとも、以前の事業からそのまま残っている不動産なのか。

利用していない資産を売却することで、設備投資や借入返済、新規事業へ資金を回した方が会社全体として合理的な場合もあります。

反対に、将来の事業展開に必要な土地であれば、短期的な収益だけで手放すべきではありません。

不動産単体ではなく、会社全体の中で位置付けることが大切です。

地主様や資産家の方は、資産全体を一つのポートフォリオとして考える

地主様や資産家の方についても、保有不動産を一件ずつ独立して見るのではなく、資産全体として考えることが重要です。

例えば、

収益性の高い不動産は残す。

将来性の高い土地は長期保有する。

管理負担の大きい不動産は整理する。

活用余地がある土地は改善する。

相続しにくい不動産は生前に整理する。

売却した資金を別の資産へ組み替える。

というように、役割を分けることができます。

こうすることで、

「不動産を何件持っているか」

という量の話ではなく、

「どのような資産を、どのような目的で持っているか」

という質の話へ変わります。

「全部売る」「全部残す」という二択にしない

保有不動産を見直すというと、

「売却を勧められるのではないか」

と思われる方もいるかもしれません。

しかし、本来の資産整理は、

「全部売る」

「全部残す」

という二択ではありません。

残すべき不動産は残す。

活用できる不動産は活かす。

条件が整えば売却する不動産は、良い条件を待つ。

役割を終えた不動産は整理を検討する。

それぞれ違う判断でよいと思います。

むしろ、複数の不動産すべてに同じ判断をする方が不自然です。

持ち続ける理由がある不動産を残す

今回の記事でお伝えしたいのは、

「不動産を減らしましょう」

ということではありません。

大切なのは、

「なぜ、この不動産を持ち続けるのか」

を一つずつ明確にすることです。

本業に必要だから持つ。

収益を生んでいるから持つ。

将来性があるから持つ。

家族に残す意味があるから持つ。

隣接地との関係で重要だから持つ。

そうした理由がある不動産であれば、保有を続ければよいと思います。

反対に、

「昔から持っているから」

「先代から受け継いだから」

「何となく売るのがもったいないから」

という理由だけで保有している不動産については、一度整理してみる価値があります。

「すべて売る」

でもなく、

「すべて残す」

でもなく、

「残す・活かす・売る」

を不動産ごとに考える。

そうすることで、保有資産全体の姿が見えやすくなります。

そして最終的には、

「不動産をどれだけ持っているか」

ではなく、

「持っている資産が、それぞれどのような役割を果たしているか」

を把握できる状態にしておく。

法人、地主様、資産家の方が保有不動産を見直すうえで、これが一つの基本になると考えています。


📩 お問い合わせ:info@yu-haim.jp


湯 田 圭 一(ゆだ・けいいち)
(有)ユーハイム 代表取締役。1972年、東京都西東京市生まれ。
宅地建物取引士として約25年にわたり不動産業に従事。
茨城県宅地建物取引業協会 水戸支部 幹事として、地域不動産業界の発展にも注力。
空き家対策、相続不動産、事業用地のマッチングなど、実務に即した現場提案に定評がある。

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